研究課題
<転写ネットワークの解明> 申請者らは世界に先駆けてTAZ欠損マウスを作成し、ホモ欠損マウスが肺気腫を呈することを報告した。さらに、共同研究先であるスウェーデン・ウプサラ大学にて外科切除を受けた非小細胞肺癌患者196例のトランスクリプトーム、345例の組織アレイ、ゲノム情報を統合的に解析し、TAZの肺癌促進作用を明らかにした。また肺上皮細胞において、炎症性サイトカインのTNF-αやLIGHTが、TGF-βによるEMT誘導を促進させることを示した。さらにTGF-βとTNF-αによる協調的な細胞内シグナル伝達機構を解明し、下流の標的遺伝子やマイクロRNAの網羅的な発現解析を行った。さらにヒト肺癌組織から初代培養線維芽細胞を樹立し、肺癌細胞との三次元共培養を行い、肺癌CAFの癌促進作用を明らかにした。またレンチウイルスによるノックダウンシステムを活用して、TGF-βが肺線維芽細胞の増殖・収縮や肺癌細胞との相互作用に与える影響を検証した。TTF-1は肺の器官形成において必須のマスター転写因子であり、TTF-1欠損マウスは肺形成不全により生直後に呼吸不全死となる。申請者らは肺癌細胞において、TTF-1がTGF-βによるEMT誘導を抑制することを見出した。さらにゲノムワイドChIP-Seqを行い、TTF-1とSmad3の結合を介した新規の転写調節機構を明らかにした。また、MACSによる細胞分離を活用し、マウス肺からのII型肺胞上皮細胞の単離法を確立した。これに2層培養法を適用することで、細胞極性及び細胞接着が維持された培養条件での細胞応答を観察することが可能になった。さらに気管支上皮細胞を気層・液層界面培養法(ALI: air-liquid interface)により線毛上皮細胞に分化誘導することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では上述のような知見・経験・技術をさらに発展させ、Hippo-TAZ/YAP経路やTGF-β-Smad経路、TTF-1を含む転写因子ネットワークが、肺の器官形成や疾患病態に及ぼす影響を統合的に解析している。研究成果も出つつあるため、上記のように判断した。
Bioinformaticsによって、転写ネットワークという視点からHippo-TAZ/YAP経路・TGF-βシグナルと主要な転写因子群との相互作用を解析する。さらに炎症・生体防御関連因子としての脂質性メディエ-タ-に着目し、難治性肺疾患の病態解明および治療標的の同定を目指す。具体的には、Conditional knockoutマウスの発生学的解析、遺伝子改変マウスを活用した呼吸器疾患モデルによって個体レベルで解析する。またマウス胎仔肺のexplant cultureやマウス由来の肺上皮細胞(気管支上皮細胞・II型肺胞上皮細胞)の初代培養・特殊培養(2層培養・ALI)を行う。さらに、ゲノムワイドな網羅的解析(ChIP-seqやRNA-seq)、公共データベースを利用したBioinformatics解析も行う。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件)
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