研究課題
COPD、ARDS、特発性間質性肺炎、難治性気管支喘息、新興呼吸器感染症(新型インフルエンザ等)などは、炎症関連機序を主体とする病態であり、その難治性・致死性や高い発症頻度から、社会的にも極めて重大な疾患群である。例えば、喫緊の対策課題であるインフルエンザの主要死因は、難治性呼吸不全・ARDSである。これらの炎症性肺疾患の病態機序・治療標的は未だに不明であり、新治療法の開発が急務とされている。発生工学、細胞培養技術、次世代シーケンサー解析などの進歩により、器官形成、ストレス応答、細胞の増殖・分化と組織の再生や、これらの制御系の破綻がもたらす疾患病態が解明されつつある。本研究ではこれらの最先端技術を活用し、呼吸器官の形態形成や恒常性維持機構を解明し、ARDS・肺線維症・肺癌などの呼吸器疾患の病態理解を深め、治療法開発への糸口を探る。具体的にはHippo-TAZ/YAP経路、TGF-βシグナル、TTF-1などの転写ネットワークや脂質関連遺伝子を解析対象とする。細胞外基質・細胞密度・細胞骨格・細胞極性、細胞接着など様々なレベルでのmechanical stressの変化が、Hippo-TAZ/YAP経路やTGF-βシグナルと密接に関連するが、この観点から肺の器官形成及び呼吸器疾患(COPD・肺線維症・肺癌)の病態を解析した報告は殆どない。本研究ではHippo-TAZ/YAP経路とTGF-βシグナルの相互作用を、mechanical stress及びmechanotransductionという観点から解析し、呼吸器官の形態形成及び恒常性維持機構を捉え直し、難治性呼吸器疾患の病態理解の新しい枠組みを提案したい。
2: おおむね順調に進展している
本研究ではConditional knockoutマウスの発生学的解析、遺伝子改変マウスを活用した呼吸器疾患モデル、初代培養肺上皮細胞の特殊培養、及び胎仔肺のexplant cultureによる解析を行う。研究成果は、論文報告されつつあるため。
難治性呼吸器系疾患に対する治療薬剤の開発は目下、困難を極めている。最新アプローチを駆使した本プロジェクトは、文字通り「ベンチからベッドへ」という橋渡し的役割を果たすものであり、その成果は、薬剤開発のプロセスを短縮し、実用化に大きく寄与することが予想される。また、難治性呼吸器系疾患に対する治療薬の開発は、社会医学的にも医療福祉・医療経済的にも莫大な貢献をなすことが予想される。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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