研究課題
本研究は神経変性におけるHippo pathwayを介した新たな細胞死(TRIAD)の詳細を解明し、この新たな概念がいかなる神経変性疾患に適応可能かを検証することにある。平成28年度には、以下の成果を得た。1)ショウジョウバエを用いた遺伝学的スクリーニングによって、TRIADに関与する分子を明らかにした。この結果、Hippo pathwayによる小胞体不安定性につながる直接的経路に加えて、複数のhnRNP遺伝子の発現抑制が及び転写抑制に加えてRNAスプライシング異常が生じており、それが間接経路としてTRIADを増強していることが明らかになった。2)ハンチントン病の原因タンパクである異常ハンチンチンを神経細胞に正常レベルで発現させた場合にも、TRIADが生じていることが明らかになった。これはin vitroの初代培養神経細胞に限らず、in vivoでハンチンチン過剰発現Tgマウスおよび正常レベルの発現をするKIマウスにおいても、同様の細胞死が生じていることを明らかにした。3)TgマウスおよびKIマウスに、Hippo pathwayを抑制するS1Pを投与することにより、ハンチントン病態で生じる小胞体不安定性と細胞死を抑制するとともに、顕著な運動機能の改善をもたらすことが明らかになった。4)ヒト剖検脳を用いた解析により、ヒトのハンチントン病態においてもTRIADが起きていることが明らかになった。これらの成果により、TRIADが少なくともハンチントン病の細胞死のプロトタイプとなりうることが、ほぼ証明できた。
1: 当初の計画以上に進展している
前述のように、ショウジョウバエを用いた遺伝学的スクリーニングによって、TRIADに関与する分子を明らかにした。この結果、Hippo pathwayによる小胞体不安定性につながる直接的経路に加えて、複数のhnRNP遺伝子の発現抑制が及び転写抑制に加えてRNAスプライシング異常が生じており、それが間接経路としてTRIADを増強していることが明らかになった。ハンチントン病の原因タンパクである異常ハンチンチンを神経細胞に正常レベルで発現させた場合にも、TRIADが生じていることが明らかになった。これはin vitroの初代培養神経細胞に限らず、in vivoでハンチンチン過剰発現Tgマウスおよび正常レベルの発現をするKIマウスにおいても、同様の細胞死が生じていることを明らかにした。TgマウスおよびKIマウスに、Hippo pathwayを抑制するS1Pを投与することにより、ハンチントン病態で生じる小胞体不安定性と細胞死を抑制するとともに、顕著な運動機能の改善をもたらすことが明らかになった。ヒト剖検脳を用いた解析により、ヒトのハンチントン病態においてもTRIADが起きていることが明らかになった。これらの成果は、申請時の予定を上回る進展である。さらに、これらの成果に基づいて、既に3つの論文発表を行った。
TRIADの適合性について、さらに、ハンチントン病以外の神経変性疾患のモデルマウス、ヒト剖検脳、細胞モデルなどを用いて検証を進める。また、治療開発のシーズとなるべき化合物についてもさらに検証を進める。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件) 産業財産権 (3件) (うち外国 1件)
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