研究課題/領域番号 |
16H02657
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 潤一 九州大学, 医学研究院, 教授 (40183305)
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研究分担者 |
松下 拓也 九州大学, 大学病院, 講師 (00533001)
山口 浩雄 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00701830)
山崎 亮 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
山本 健 久留米大学, 医学部, 教授 (60274528)
篠田 紘司 九州大学, 医学研究院, 助教 (70747998)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / 視神経脊髄炎 / グリアシンシチウム / 免疫グリア細胞間相互作用 |
研究実績の概要 |
T細胞受容体(TCR)配列をadaptor-ligation PCR法によるシークエンシングで確認し、多発性硬化症(multiple scleorsis; MS)におけるTCRレパトアの特徴を健常者群と比較することで明らかにした。α鎖、β鎖遺伝領域のいずれも,その多様性は健常者群と比較して多発性硬化症で高く、一方でδ鎖、γ鎖領域では多様性に有意な差はなかった。α鎖の相補性決定領域(CDR)3については健常者群と比較してMSでは14アミノ酸長の配列の発現が多く、この長さの配列についてさらに特徴を比較したところ、MSでは9番目のグリシン残基が健常群より保存されている傾向があった。 中枢神経脱髄疾患の一つであるBalo病は同心円病変を特徴とし、典型病巣では最外層が急性期病変で、中心部は慢性期病変とされる。TMEM119/GLUT5陽性細胞は、急性期活動性病変である最外層に多数存在し、中心部の慢性期病巣ではいずれの陽性細胞も乏しかった。TMEM119はresident microglia特異的なマーカーとして注目されておりGLUT5もresident microgliaで発現しているものと推定され、脱髄病変の急性期にresident microgliaの特異的な関与が示唆された。 GLAST-creERT/loxPシステムによるアストログリア特異的・時限的connexin(Cx)43ノックアウトマウスを作成し、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導したところ、非ノックアウトマウスと比較して表現型が軽症化し、脊髄病理では炎症細胞浸潤、脱髄が抑制された。一方でPLP-creERT/loxPシステムによるオリゴデンドログリア特異的・時限的Cx47ノックアウトマウスにEAEを誘導したところ、非ノックアウトマウスと比較して重症化し、慢性期に再度脱髄が進行する二次性進行型MS様の経過を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T細胞受容体遺伝子のシークエンシングを行い、MSと健常者群でその特徴を比較解析した。Cx43、47のアストログリア、オリゴデンドログリア特異的欠損マウスを作成し、EAEを誘導した。
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今後の研究の推進方策 |
欠失型CNV を有するMS、NMO 患者に固有のT 細胞受容体遺伝子構成を偏移が明らかにし、EBウイルスにより患者末梢血リンパ球を不死化して抗原提示細胞クローンを作成する。そして、ランダムペプチドライブラリーから同T細胞受容体が認識するエピトープをスクリ ーニングし、当該エピトープの配列を有する中枢神経蛋白抗原を同定する。当該抗原でマウスを免疫し、MSと同様の脱髄病変あるいは EAEが惹起できるかを臨床病理学的に検討する。新規グリア活性化阻害薬として、ミクログリアの異常な活性化を抑えるイグラチモド、私たちが発見したアストログリアの異常な活性 化を抑える選択的endothelin receptor type B (EDNRB)阻害薬BQ788、ヘミチャネルとなったCxからの有害物質の放出を阻止するCx mimetic peptideを、MOG-EAE発症後に投与し、病勢の進行を抑制できるか検討する。さらに欠失型CNVを有するMS/NMO患者由来T細胞受容体が認識する中枢神経抗原で誘導したMS動物モデルでも、これらのグリア活性化阻害薬が有効かを検討する。
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