骨軟部腫瘍における診断マーカーの同定と腫瘍概念の再構築を目指した融合遺伝子の探索

2018 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16H02676
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 松田 浩一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90401257)
• 研究分担者: 中村 卓郎 公益財団法人がん研究会, がん研究所 発がん研究部, 部長 (00180373) ; 中山 タラントロバート 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (00365298) ; 高阪 真路 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (00627119) ; 松本 嘉寛 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10346794) ; 植田 幸嗣 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター がんオーダーメイド医療開発プロジェクト, プロジェクトリーダー (10509110) ; 穴澤 卯圭 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (20245525) ; 比留間 徹 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 部長 (20254188) ; 大隈 知威 東京都立駒込病院(臨床研究室), 骨軟部腫瘍科, 医長 (40806189) ; 河野 博隆 帝京大学, 医学部, 教授 (20345218) ; 阿江 啓介 公益財団法人がん研究会, 有明病院 整形外科, 部長 (20376726) ; 小林 寛 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20407951) ; 岡本 健 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30414113) ; 河本 旭哉 神戸大学, 医学研究科, 特命講師 (30420558) ; 平賀 博明 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 外科系診療部長 (30501530) ; 土屋 弘行 金沢大学, 医学系, 教授 (40227434) ; 秋山 達 自治医科大学, 医学部, 教授 (40376471) ; 元井 亨 東京都立駒込病院(臨床研究室), 病理科, 医長 (50291315) ; 西田 佳弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院教授 (50332698) ; 中川 英刀 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50361621) ; 米本 司 千葉県がんセンター(研究所), 整形外科, 部長 (50506318) ; 吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 理事・副学長 (60191558) ; 小田 義直 九州大学, 医学研究院, 教授 (70291515) ; 末原 義之 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70509405) ; 國定 俊之 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (80346428) ; 松原 大祐 自治医科大学, 医学部, 准教授 (80415554) ; 川井 章 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (90252965) ; 山口 類 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (90380675) ; 綿貫 宗則 東北大学, 大学病院, 講師 (90451575) ; 中 紀文 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 整形外科主任部長 (90601964)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 肉腫 / ゲノム解析

研究実績の概要

本課題では、骨軟部腫瘍の多様性の分子メカニズムの解明と新規治療方法の開発を目的として、骨軟部腫瘍のゲノム解析・機能解析を進めている。ゲノム解析の対象の13疾患(類上皮肉腫、類骨骨腫、骨芽細胞腫、骨線維異形成、アダマンチノーマ、顆粒細胞腫、Mammary type myofibroblastoma、Cellular angiofibroma、異所性過誤腫性胸腺腫、血管周囲類上皮細胞腫瘍、粘液型脂肪肉腫、多形脂肪肉腫、脊索腫)について骨軟部腫瘍ゲノムコンソーシアムに参加する各医療機関での腫瘍、正常検体の収集と臨床情報の整理を進めた。腫瘍凍結組織検体を東京大学に順次送付し、これまでに凍結腫瘍組織100検体を新規に収集し、薄切のうえ核酸の抽出およびHE染色を行った。さらに腫瘍細胞の含有率の測定、および各医療機関より診断時に使用した病理標本および病理資料の収集を進め、中央病理診断施設である駒込病院、九州大学へ送付し、病理診断の確認を実施した。抽出した核酸の質と量を評価のうえ、理化学研究所の中川らが解析対象とした70検体についてRNAシークエンス解析を実施した。シークエンス結果については、東京大学医科学研究所の山口らが情報解析を実施し、疾患特異的な融合遺伝子の探索を行った。その結果、TSGCT特異的な融合遺伝子としてCSF1-VCAM1, CSF1-FN1、CSF1-CDH1を同定した。また脱分化型脂肪肉腫特異的な融合遺伝子として、CTDSP1/2-DNM3OS fusionを同定した。これらの融合遺伝子は、新規の腫瘍診断マーカーや治療標的として有望と考えられる。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では、25医療機関からなる共同研究実施体制が構築され、試料・臨床情報収集が順調に進んでいる。またこれらの試料を用いて、大規模なゲノム解析が実施され、その成果として新規の疾患融合遺伝子が腱滑膜巨細胞腫や脱分化型脂肪肉腫で同定されている。これらは、新たな診断や予後のバイオマーカー、治療標的となる可能性があり、臨床応用が期待されれている。以上の成果に基づき、概ね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

本研究課題では、国内25医療機関と10の研究機関からなるオールジャパン体制を継続し、骨軟部腫瘍を対象とした探索的、網羅的解析を進めていく予定である。またRNAシークエンスに加え、Proteome解析やゲノムシークエンス解析を組み合わせることで、より詳細に腫瘍組織の解析をすすめ、疾患バイオマーカー、治療標的の同定を進めていく。

研究成果

• [雑誌論文] Integrated exome and RNA sequencing of dedifferentiated liposarcoma (2019)
  • 著者名/発表者名: Hirata Makoto、Asano Naofumi、Matsuda Koichi et al.
  • 雑誌名: Nature Communications 巻: 10 ページ: 13286-13286
  • DOI: doi: 10.1038/s41467-019-13286-z
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Massively parallel sequencing of tenosynovial giant cell tumors reveals novel CSF1 fusion transcripts and novel somatic CBL mutations (2019)
  • 著者名/発表者名: Tsuda Yusuke、Hirata Makoto、Matsuda Koichi et al.
  • 雑誌名: International Journal of Cancer 巻: 145 ページ: 3276～3284
  • DOI: 10.1002/ijc.32421
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Frequent mutations of genes encoding vacuolar H +‐ATPase components in granular cell tumors (2019)
  • 著者名/発表者名: Sekimizu Masaya、Yoshida Akihiko、Matsuda Koichi、Inagaki Katsunori、Kawai Akira、Ichikawa Hitoshi et al.
  • 雑誌名: Genes, Chromosomes and Cancer 巻: 58 ページ: 373～380
  • DOI: doi: 10.1002/gcc.22727
  • 査読あり / オープンアクセス