研究課題/領域番号 |
16H02679
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
羽渕 友則 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (00293861)
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研究分担者 |
南條 博 秋田大学, 医学部附属病院, 准教授 (70250892)
土谷 順彦 山形大学, 医学部, 教授 (70282176)
大山 力 弘前大学, 医学研究科, 教授 (80282135)
沼倉 一幸 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (90566415)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | adiposity / 前立腺癌 / 腫瘍微小環境 / 腎癌 / サイトカイン / 高脂肪食 / 肥満 / microbiota |
研究実績の概要 |
●本研究の目的は、腫瘍微小環境における脂質、液性免疫因子、局所免疫細胞の包括的解析を行い、Adiposity亢進による腫瘍進展に関与する免疫微少環境関連標的分子を同定することであるが、2018年度には2016年~継続して以下の結果を出し、知見を示すことができた。 ●我々は以前、MIC-1が高脂肪食下での前立腺進展に関わることを報告したが、2017年にMIC-1の受容体がGFRAL(GDNF family receptor α-like)であることが報告された(Nature 2017)。2018年には、このGFRAL/MIC-1システムと前立腺癌進展と癌免疫微小環境の解析を行い、高脂肪によって、前立腺癌細胞からのMIC-1の発現亢進がおこり、MIC-1が間質細胞を刺激し、IL-6やIL-8の発言を促進、結果として、前立腺癌の進展を促すことを見出した(投稿準備中)、現在さらに高脂肪食下でのGFRAL/MIC-1システム亢進の分子機構を解析している。 ●脂肪酸結合分子4(FABP4)は脂質シャペロン分子で脂質代謝に重要な働きをするが、前立腺癌細胞と前立腺癌組織におけるFABP4の発現と前立腺癌細胞の増殖、浸潤能における機能解析を行い前立腺癌細胞によるFABP4の産生と分泌は前立腺癌の進展を促進する可能性があることを示した(2016-2018年度、Oncotarget 2017)。 ●高脂肪食によるmicroRNAの発現異常による前立腺癌進展を示した(2016-2018年度、Carcinogenesis 2016)。 ●腎癌におけるAdipokineやインスリン受容体の解析により、腎癌発症の肥満パラドックス(肥満は腎癌のリスクファクターであるが、進展に対しては、予防的に働く)を説明できる結果を示した(2016-2018年度、PLoS One 2017、Oncol Rep 2017)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、腫瘍微小環境における脂質、液性免疫因子、局所免疫細胞の包括的解析を行い、Adiposity亢進による腫瘍進展に関与する免疫微少環境関連標的分子を同定することであるが、以下の結果、知見を示すことができた。 ●我々は、MIC-1が高脂肪食下での前立腺進展に関わることを報告したが、2017年にMIC-1の受容体がGFRALであることが報告された(Nature 2017)。2018年には、このGFRAL/MIC-1システムと前立腺癌進展と癌免疫微小環境の解析を行い、高脂肪によって、前立腺癌細胞からのMIC-1の発現亢進がおこり、MIC-1が間質細胞を刺激し、IL-6やIL-8の発言を促進、結果として、前立腺癌の進展を促すことを見出した。 ●脂肪酸結合分子4(FABP4)は脂質シャペロン分子で脂質代謝に重要な働きをするが、前立腺癌細胞と前立腺癌組織におけるFABP4の発現と前立腺癌細胞の増殖、浸潤能における機能解析を行い前立腺癌細胞によるFABP4の産生と分泌は進展を促進する可能性があることを示した(Oncotarget 2017)。 ●高脂肪食によるmicroRNAの発現異常による前立腺癌進展を示した(Carcinogenesis 2016)。 腎癌におけるAdipokineやインスリン受容体の解析により、腎癌発症の肥満パラドックス(肥満は腎癌のリスクファクターであるが、進展に対しては、予防的に働く)を説明できる結果を示した(PLoS One 2017、Oncol Rep 2017)。 以上より、本研究はおおむね順調に進んでいると言える。今後、高脂肪食・肥満下の前立腺癌増殖・進展における腸内細菌叢異常と全身性免疫応答(サイトカイン誘導)が関連するかを明らかにし、腸内細菌叢の制御により前立腺癌や腎癌の進展を阻止できるかも検討する。
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今後の研究の推進方策 |
1) 我々は高脂肪職の中でもラード食摂取により遺伝子改変マウスが白色脂肪増加を引き起こし、前立腺癌発症比率が増加し、増殖能が亢進していることを見出した。一方、対象群と比較し、ラード食摂取マウスの腸内細菌叢変化を認め、癌増殖、癌微小免疫環境の関連が興味深い新たなテーマとして見出された。2019年以降は現在の研究に加えて、高脂肪食・肥満下の前立腺癌増殖・進展における腸内細菌叢異常と全身性免疫応答(サイトカイン誘導)が関連するかを明らかにする。さらに腸内細菌叢の制御により前立腺癌進展を阻止できるかも検討する。 2) さらにMIC-1/GFRALシステム亢進とAdiposity亢進にともなう前立腺癌進展機構の解析をすすめる。とくに腫瘍免疫微小環境の異常に注目し、IL-6やIL-8の関与を分子レベルで示す。 3) 泌尿器癌腫瘍周囲の脂肪細胞の培養系を用いて、in vitroでのサイトカイン産生プロフィールを正常者(腎移植の腎提供者)の脂肪培養と比較し、腫瘍免疫微小環境に影響を与える分子を同定。 4) 分子疫学的手法によって候補分子の遺伝子多型・泌尿器癌進展や生活習慣との背景、臨床情報、臨床経過、治療効果(特に新規免疫療法)との関連を検証、臨床応用に繋げる。
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