研究課題/領域番号 |
16H02681
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
猪原 秀典 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00273657)
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研究分担者 |
森下 竜一 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (40291439)
大野 ゆう子 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60183026)
真下 知士 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (80397554)
藤堂 剛 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90163948)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | human papillomavirus / oral HPV infection / transgenic mice / CRISPR/Cas9 / liquid biopsy |
研究実績の概要 |
435名の健常者を対象に咽頭HPV感染の検討を行った。咽頭から含嗽単独で回収した細胞検体、含嗽+咽頭洗浄で回収した細胞検体を用い、nested PCR + direct sequencing、そしてGENOSEARCH HPV31 (MBL)によるHPVの検出と型判定を行った。Nested PCRとGENOSEARCHによるHPVの検出効率は同等であった。含嗽単独の検体と含嗽+咽頭洗浄の検体を比較すると、HPV全体の検出効率は後者で優れており、高リスク型HPVの検出効率は後者が優れる傾向にあり、HPV16の検出効率は両者間で有意差を認めなかった。咽頭HPV感染率は5.5%であり、HPV16は1.4%で最も高頻度であった。また、咽頭HPV感染のリスクは性活動と相関していた。 HPV16陽性中咽頭癌動物モデルの開発を目的として、K14(サイトケラチン14)プロモーターが挿入されているpG3Z-K14 cassetteベクターに人工合成したHPV16 E6(TTL)E7配列を挿入したK14HPVE6(TTL)E7ベクターを作製した。今後、同ベクターをC57B6マウスの受精卵前核にマイクロインジェクションし、K14HPVE7トランスジェニックマウスを得る予定である。同様に、変異型PIK3CA (E542, Glu→Lys) を挿入したベクターを作製中である。 HPV16 E6/E7遺伝子を標的としたguide RNAとCas9の一体化ベクターを作製し、CRISPR/Cas9システムを用いてE6/E7をノックアウトしたHPV16陽性中咽頭癌培養細胞株を作製中で、間もなく完成する見込みである。 HPV DNAのliquid biopsyに関しては、条件の最適化を行っている。血漿からcell-free DNAを抽出し、デジタルPCRによるHPV16 E6/E7のコピー数の絶対定量を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
咽頭HPV感染の評価に関しては、当初予定していた手法よりも高感度な手法を用いて検討を行い、十分な回答が得られるか危惧された性活動に関するアンケートも全例で問題が無く、十二分に解析を行うことができた。HPV陽性中咽頭癌動物モデルの開発については、完成は未だであるがトランスジェニックマウスの作製が順調に進んでいる。CRISPR/Cas9を用いたE6/E7ノックアウト頭頸部扁平上皮癌の作製についても、完成は未だであるが作製は順調に進んでいる。HPV DNAのliquid biopsyに関しては、条件の最適化を行い、間もなく臨床検体を用いた検討を開始する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
1)咽頭HPV感染の評価にあたり、HPV陽性中咽頭癌の原因の大半を占めるHPV16に特化した場合、デジタルPCRを用いることにより検出感度を向上させることができるか検討を行う。2)HPV陽性中咽頭癌動物モデルの開発を昨年度に引き続いて行い、HPV16 E6/E7トランスジェニックマウス、変異型PIK3CAトランスジェニックマウス、ダブルトランスジェニックマウスを作製し、その表現型を解析する。3)CRISPR/Cas9によりE6/E7をノックアウトしたHPV16陽性中咽頭癌培養細胞株を用い、親株と表現型について比較するとともに、放射線感受性等について検討する。4)p16陽性且つHPV16 DNA陽性のHPV陽性中咽頭癌患者を対象にHPV DNAのliquid biopsyを行い、HPV16 E6/E7のコピー数がTNM分類やmetabolic tumor volumeと相関するか検討するともに、コピー数の治療経過による変化について検討する。
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