研究課題/領域番号 |
16H02684
|
研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
塩田 清二 星薬科大学, 先端生命科学研究所, 教授 (80102375)
|
研究分担者 |
土肥 謙二 昭和大学, 医学部, 教授 (20301509)
竹ノ谷 文子 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (30234412)
中町 智哉 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (30433840)
亀井 淳三 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40161236)
宮田 篤郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (60183969)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | PACAP / 遅発性神経細胞死 / 軸索伸長 / CRMP2 / マーモセット |
研究実績の概要 |
PACAP (Pituitary Adenylate Cyclase-Activating Polypeptide)は、神経細胞の保護および神経修復・再生の二つの作用を有する神経ペプチドである。昨年からマーモセットを用いて脳虚血モデルを作成してPACAPによる人でのトランスレーショナルな研究を行うために実験を行う予定で研究を進めてきた。共同研究者の宮田らがこの動物を繁殖維持しており、脳虚血モデルの作成実験を継続しており、脳虚血のモデル作成に成功したがまだPACAPによる神経細胞死の実験については例数が届かず、まだ十分信頼性のあるデータがとれていない。そこでマウスを用いたPACAPの動物実験を並行して行い、PACAPの新しい神経細胞への機能の発見につとめた。まず、脳虚血マウスのにおいて虚血後における神経細胞の再生と新生について遺伝子およびタンパクレベルでのOMICS解析を行なった。その結果、虚血巣周囲のペナンブラ領域において大変興味深い実験データを得た。主な結果として、DNAアレイ解析によってPACAP投与群においてパスウェイ解析で細胞の移動に関わる遺伝子群の活性化がみられた。これは損傷した部位への神経細胞の移動をPACAPが促し機能修復に関わる栄養を及ぼすことを示唆するものであり、今後さらに追求を行う。さらにPACAP投与したペナンブラ領域において、PACAPが軸索伸長因子の遺伝子およびこのタンパクのリン酸化を促進していることも発見した。これはPACAPが脊髄損傷モデルでみられた我々の実験データを脳内でみられたことから、PACAPによる脳や脊髄において神経細胞死の防御のみならず、積極的に神経細胞から軸索伸長を促して機能修復を行う可能性を強く支持する結果であるといえる。今後は、人臨床への応用を行うためマーモセットを用いて人での臨床研究に向けた動物実験を行う予定である
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験動物としてマウスを用いたPACAPの遅発性神経細胞死防御の分子機構などについてはDNAアレイ解析を用いて順調に研究が進んでいる。さらに培養実験下でPC12細胞をつかったより詳細な神経細胞死抑制機構および軸索伸長の分子機構の解析も順調に進んでいる。ただ、マーモセットによる動物実験については共同研究者の鹿児島大学医歯学研究分野の宮田教授のほうで動物の繁殖と維持は行なっており、これについては問題がない。ただし、マーモセットを使って脳虚血実験を行なっていた救急医学のドクターが他の大学に移動されたため、動物実験が一時中断していた。ただ緊密な情報交換の結果、鹿児島大学にて共同研究ができるようになったので、今後はマーモセットをつかったトランスレーショナルな研究を行うことできるようになり、我々のもっている知財を有効かつようして人での臨床応用研究に向けて進んでいくことができると考えています。また、我々のほうではマウスを使ってPACAPの受容体の遺伝子欠損動物も作製しているので、これを使ってより詳細なPACAPの動物実験も可能であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
我々は、以前にカニクイザルを用いたプレリミ脳虚血動物実験にて、PACAPが若干の血圧低下作用を示すこと、血糖値に作用するなどの現象を確認した。ただ、その時は、動物個体数を集められず、脳梗塞や運動機能の解析については個体数の問題、繁殖飼育の問題などがあり、有意な差異は得られなかった。そこでより実現可能な動物としてマーモセットを選択した。これは共同研究者の鹿児島大学の宮田教授のところで繁殖維持をしており、またそこでは脳虚血モデルを作成する技術があるので、人でのトランスレーショナルな研究として、マーモセットを用いて中大脳動脈閉塞モデルを作出し、PACAPを静脈内持続投与する実験を行う計画をしている。またできれば脊損モデルもこの動物で作出しPACAPによる臨床応用に向けた動物実験をおこないたい。今後の方策としては、十分な動物実験の個体数を確保し、また実験方法として脳虚血の方法についてもこの動物にみあった虚血モデルを十分検討し、虚血モデルを含めて現在さらにチーム内で討議をして目的とする動物実験研究を行う予定である。さらに我々の教室では、培養実験系でPACAPによるPC12細胞を使って細胞死防御機能のさらなる検索を行う予定である。またDNAアレイ解析も行うシステムができており、培養細胞でのOMICS解析も行う予定である。さらに連携研究者の平林がPAC1R, VPAC1R, VPAC2RなどのPACAP受容体のKO マウスをCrisper Cas9システムをつかって動物を作製しているので今後この動物が作出できたら動物実験あるいは培養下でのより詳細な分子制御機構の解析を行う予定である。
|