研究課題/領域番号 |
16H02690
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石丸 直澄 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (60314879)
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研究分担者 |
新垣 理恵子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 准教授 (00193061)
齋藤 雅子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (00723892)
工藤 保誠 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 准教授 (50314753)
山田 安希子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (70452646)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / 環境因子 / 加齢 / 性ホルモン / メタボリズム |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患の発症因子の中でも環境因子を起点とした免疫トレランスの破綻は極めて複雑で、その詳細なメカニズムは不明な点が多い。生体内で、加齢、性ホルモンの変動、メタボリズム異常などの環境の変化が免疫トレランスの維持機構に大きな影響を与えるものと考えられている。本研究では、環境因子変動モデルと自己免疫疾患モデルの複合モデルを応用し、自己反応性獲得機構を多角的なアプローチから詳細に検討した。 加齢と自己免疫に関連して、シェーグレン症候群の疾患モデルの一つであるaly/alyマウス(NIK遺伝子変異)を用いて、加齢に伴って増加するメモリー型のCD4陽性T細胞が標的臓器に浸潤する機構を探索すると、ケモカインの一つであるCXCL12及びその受容体であるCXCR4を介した反応が重要であることを報告した(Arthritis Rheumatol. 2017, 69:2193-2202)。 性ホルモンと自己免疫に関しては、前年度に妊娠期のマウス胸腺を用いた遺伝子の網羅的解析により、マクロファージのIGFBP5を同定した(J Oral Health Biosci. 2017)。現在、IGFBP5ノックアウトマウスを用いた免疫系への影響を検討中である。肥満と自己免疫に関しては、高脂肪食をシェーグレン症候群疾患モデルに与えたときの、唾液腺における遺伝子変化を網羅的に解析した結果から、現在いくつかの因子に絞り込み、病変との関係性など詳細な解析を実施している。さらに、唾液腺における組織常在型マクロファージのユニークな特徴を探索中であり、病態の時間軸にあわせて変化することが明らかになっている。さらに、自己免疫反応に重要な役割を果たしている胚中心反応の分子機序に関しても研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には、8本の英文論文(査読あり)とともに、英文著書1本、和文総説を1本公表している。さらに、歯科基礎医学会日本学術会議のシンポジウム、各学会での特別講演の演者を務めた。また、学会発表においても日本病理学会、日本免疫学会、日本シェーグレン症候群学会、国際シェーグレン学会、国際自己免疫学会などで発表している。ほとんどの業績が、本研究と関連する内容である。 自己免疫とT細胞に関する内容(J Exp Med 2017 214:1925-1935, Arthritis Rheumatol. 2017, 69:2193-2202, J Clin Cell Immunol. 2017, 8(4):1000512)などオリジナル研究が中心であり、共同研究での論文もある。中でも、加齢に関連したメモリー型T細胞のケモカインを介した自己免疫反応に関する新知見は、自己免疫疾患の新たなメカニズムであるとともに、臨床応用の可能性を示している。また、免疫疾患だけではなく腫瘍に関しても研究を進めており、幅広い研究活動を展開している。さらに、国際共同研究に関しても論文発表成果をあげている。 以上のことから、当初計画していた内容に加えて本研究をさらに発展できるような研究業績をあげており、おおむね順調に進んでいるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫疾患の発症因子の中でも環境因子を起点とした免疫トレランスの破綻は極めて複雑で、その詳細なメカニズムは不明な点が多い。本研究では、生体内の環境変化による免疫システムへの影響に焦点を当てて、環境因子変動モデルと自己免疫疾患モデルの複合モデルを応用し、自己反応性獲得機構を多角的なアプローチから詳細に検討することによって、環境因子による自己免疫疾患の発症機序を解明することを目的とする。 前年度までに加齢、性ホルモン、メタボリズムによるそれぞれの免疫細胞におけるキーとなる分子を自己反応性獲得に重要な要因を絞り込み、自己免疫モデルでの発現、機能の検証を実施する。 前年度の結果から、加齢変化に伴う各免疫細胞における自己反応性獲得機序仮説に関して、遺伝子組み換えマウスによる評価が可能な場合は、Cre-loxpシステムなどを応用して細胞特異的な遺伝子組み換えモデルの作成、検討を実施する。T細胞、B細胞、自己抗体、マクロファージを基軸にした自己免疫疾患機序に関する内容を探索中であり、T細胞でのケモカイン受容体分子、マクロファージでのケモカイン分子を同定しており、臨床サンプルなどを用いた研究に発展させる予定である。 絞り込んだエストロゲン関連遺伝子であるIGFBP5の胸腺マクロファージでの発現時期、局在あるいは機能に関してin vivoあるいはin vitroの多角的なアプローチにより解析を進めている。IGFBP5遺伝子ノッックアウトマウスを用いた検討に入っており、妊娠期における免疫制御機構に関与するかを検討する予定である。 本年度は最終年度であることから、基礎研究から臨床研究にいたるトランスレーショナルリサーチに展開できるよう努めていきたい。また、学会発表、論文発表などを通して、様々な方面からの意見を取り入れて、将来的にさらに発展できる研究にしていきたい。
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