GEOTRACES計画に基づく外洋域観測の完遂と微量元素データベース構築

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16H02701
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 蒲生 俊敬 東京大学, 大気海洋研究所, 名誉教授 (70143550)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 国際GEOTRACES計画 / 微量元素 / 同位体 / 海洋の生物地球化学 / クリーン海洋観測

研究実績の概要

1）海外観測航海への参加：　東部南太平洋における南北縦断観測を実施し、GEOTRACES微量元素データの取得を進めた。白鳳丸によるKH-19-6次研究航海レグ2及び3（10月28日、ホノルル（米）出港、12月18日、プンタアレナス（チリ）入港）に、小畑元（連携研究者）および大学院学生2名が乗船し、海水試料のクリーン採取と船上化学分析に従事した。さらに、日本海と東シナ海におけるGEOTRACESデータ取得のため、長崎大学・長崎丸による3回の航海に張勁（連携研究者）および大学院学生2名が乗船し船上観測研究に従事した。
2）研究協力者の雇用による研究体制の強化：　博士研究員および技術補佐員を通年雇用し、海水中の微量元素濃度と存在状態の解明を進めた。また国際的な共同研究および情報交換を活発に実施した。
3）研究発表：　国際会議ゴールドシュミット2019（バルセロナ（スペイン）、8月18日～23日）、CREAMS-AP会議（カンヌン（韓国）、5月21日～22日）に連携研究者および研究協力者を派遣し、GEOTRACES研究成果を公表するとともに、海外研究者との情報交換を促進した。また国内においても、日本地球惑星科学合同大会（幕張、5月26日～30日）、日本地球化学会年会（東京、9月17日～19日）、日本海洋学会秋季大会（富山、9月25日～29日、国際SCOR総会と同時開催）などに参加し、GEOTRACES研究成果の発表に努めた。
4）情報発信の充実：　研究代表者・連携研究者を中心に、研究成果の論文公表を進めた。また、これまでのGEOTRACES航海によって取得した微量元素データをGEOTRACESデータセンターへ登録するため、データの相互比較と、データベース構築を進めた。また、国内GEOTRACESウェブサイトの充実を図り情報発信に努めた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画の目標とする「外洋調査」と「国際的成果発信」の両面において、年度当初の目標をほぼ達成し、全体として5年計画の4年目を順調に経過できた。9月下旬に富山大学において開催された日本海洋学会秋季大会の前半部は、国際SCOR（海洋研究科学委員会）年会と同時開催であった。SCORはGEOTRACES計画を発足させた母体である。富山会議において、諸外国のSCOR委員を交えたGEOTRACES計画関連の特別シンポジウムが開催された。シンポジウムにおいて、我が国のGEOTRACES研究の進展状況を紹介し、SCOR委員より高い評価を得たことは、本研究の順調な進展による貢献が大きいと評価できる。

今後の研究の推進方策

これまでと変わらず、「外洋調査」と「国際的成果発信」の両面から、国際GEOTRACES計画の推進に努める。本年度は本計画の最終年度（5年目）であるので、5年間の総括という観点を含めて、研究成果の取りまとめにあたる。なお想定外に発生した新型コロナウィルス（COVID-19）蔓延による様々な活動自粛（例えば観測航海の延期、研究集会の中止など）は、本研究の遂行にとってもマイナスの効果を与える可能性は否めない。明確な見通しの立てにくいところもあるが、適宜予定変更するなどの対策をとりつつ、最小限のマイナスに押さえ込めるよう努力したい。

研究成果

• [国際共同研究] マサチューセッツ工科大学/コロンビア大学(米国)
  • 国名: 米国
  • 外国機関名: マサチューセッツ工科大学/コロンビア大学
• [国際共同研究] ベンクール大学(インドネシア)
  • 国名: インドネシア
  • 外国機関名: ベンクール大学
• [国際共同研究] ソウル国立大学校/プキョン大学校(韓国)
  • 国名: 韓国
  • 外国機関名: ソウル国立大学校/プキョン大学校
• [雑誌論文] Anthropogenic Lead Pollution in the Ocean (2020)
  • 著者名/発表者名: Gamo, T.
  • 雑誌名: Advances in Geological Science, "Human Geoscience" (Y. Himiyama et al. (eds.)), Springer 巻: - ページ: 295-306
  • DOI: 10.1007/978-981-32-9224-6_21
  • 査読あり
• [雑誌論文] Neodymium concentration and isotopic composition distibutions in the southwestern Indian Ocean and the Indian sector of the Southern Ocean (2019)
  • 著者名/発表者名: Hiroshi Amakawa, Tsai-Luen Yu, Hirofumi Tazoe, Hajime Obata, Toshitaka Gamo, Yuji Sano, Chuan-Chou Shen, Katsuhiko Suzuki
  • 雑誌名: Chemical Geology 巻: 511 ページ: 190-203
  • DOI: 10.1016/j.chemgeo.2019.01.007
  • 査読あり
• [雑誌論文] A comprehensive global oceanic dataset of helium isotope and tritium measurements (2019)
  • 著者名/発表者名: William J. Jenkins, Scott C. Doney, Michaela Fendrock, Rana Fine, Toshitaka Gamo, Philippe Jean-Baptiste, Robert Key, Birgit Klein, John E. Lupton, Robert Newton, Monika Rhein, Wolfgang Roether, Yuji Sano, Reiner Schlitzer, Peter Schlosser, Jim Swift
  • 雑誌名: Earth System Science Data 巻: 11 ページ: 441-454
  • DOI: 10.5194/essd-11-441-2019
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Vertical distribution of perfluoroalkyl substances in water columns around the Japan Sea an the Mediterranean Sea (2019)
  • 著者名/発表者名: Eriko Yamazaki, Sachi Taniyasu, Yuefei Ruan, Qi Wang, Gert Petrick, Toste Tanhua, Toshitaka Gamo, Xinhong Wang, Paul K.S. Lam, Nobuyoshi Yamashita
  • 雑誌名: Chemosphere 巻: 231 ページ: 487-494
  • DOI: 10.1016/j.chemosphere.2019.05.132
  • 査読あり
• [学会発表] 現代海洋における鉛同位体比：これまでの知見と新たなアプローチ (2020)
  • 著者名/発表者名: 則末和宏、浅沼大地、小畑元、蒲生俊敬、岡村慶、永石一弥、石川剛志
  • 学会等名: 高知コア共同利用成果発表会
• [学会発表] Determination of picomolar of zirconium, hafnium, niobium and tantalum in seawater using chelating resin and subsequent ICP-MS determination (2019)
  • 著者名/発表者名: Hajime Obata, Lutfi M. Firdaus, Asami S. Mashio, Taejin Kim, Jason McAlister, Toshitaka Gamo
  • 学会等名: 日本地球惑星科学連合大会2019
• [学会発表] 北太平洋広域における溶存態鉛安定同位体の分布 (2019)
  • 著者名/発表者名: 則末和宏、松原由奈、中川正親、小畑元、岡村慶、永石一弥、石川剛志、蒲生俊敬
  • 学会等名: 日本地球化学会年会
• [学会発表] Distribution of lead isotopes in the North Pacific (2019)
  • 著者名/発表者名: Kazuhiro Norisuye, Hajime Obata, Toshitaka Gamo, Edward A. Boyle
  • 学会等名: 日本海洋学会秋季大会
• [備考] GEOTRACES Japan 海洋の微量元素・同位体による生物地球化学研究
  • URL: https://www.jodc.go.jp/geotraces/index_j.htm
• [備考] 国際GEOTRACES計画のウェブサイト
  • URL: http://www.geotraces.org