研究課題
北極域のエアロゾルおよび雲の高度分布とその時間変化の測定は、極域という制約から、地上設置の装置による通年連続観測の例はごく限られている。我々は本研究に先立つ基盤研究の前課題「北極ヘイズが氷雲粒子濃度に与える影響に関するライダーとレーダーによる観測研究」にて、スバールバル、ニーオルスン国立極地研究所北極基地に、二波長ミー散乱偏光ライダーを設置し、2014年3月より対流圏・下部成層圏のライダー連続観測を開始して、2年間超のデータを取得していた。本研究ではさらに3年間の連続観測を実施し、前研究課題と本研究で、 観測開始から約5年の期間、測定を継続した。ニーオルスンライダーはNd:YAGレーザの二波長(1064nmと532 nm)を用い、それぞれの波長の後方散乱係数、および532nmの偏光解消度を測定している。エアロゾルの季節変化の解析には晴天時だけの信号を用いている。 エアロゾルの光学的な濃度が低くかつ変化の程度が小さい成層圏高度において、ニーオスンで実施されているラジオゾンデ気象観測のデータから計算されたレーリー後方散乱係数を用いて信号を校正した。偏光解消度については、先行研究に基づき境界層内での球形粒子の存在を仮定して信号の較正を行った。上記のような解析が可能であるような晴天時間を含む観測日の数は、観測を開始した2014年3月から2019年3月までで約700日であった。月平均後方散乱係数と月平均粒子偏光解消度は高度2~10kmで明確な1年周期の変化を示し、それぞれ、夏季と春季に極大を示して、異なった季節変化を示している。また偏光解消度では2017年9月から2018年1月にかけて上記の季節変化の周期とは明らかにずれた極大が見られる。これはカナダ、ブリティッシュコロンビアで発生した大規模な山火事により増加したバイオマス燃焼期限のエアロゾルによることが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Geophysical Research: Atmospheres
巻: 123 ページ: 12,353~12,367
10.1029/2018JD028973