研究課題/領域番号 |
16H02723
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
大友 一雄 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (30169007)
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研究分担者 |
西村 慎太郎 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (90383546)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本史 / バチカン / 切支丹 / マレガ / アーカイブズ |
研究実績の概要 |
本研究は、2011年にバチカン図書館で発見された通称マレガ文書(マリオ・マレガ神父が戦前戦中に収集した17~19世紀の豊後切支丹文書1万数千点)、およびローマのサレジオ大学図書館所蔵の関連書簡や記録などを対象にして、近年のアーカイブズ学に基づいた段階的な調査の実践と検証を通じて、世界の人々に日本の切支丹禁制に関わる資料情報を多言語で発信することを目的としている。すでに人間文化研究機構が本資料群の物理的調査、保存修復、資料撮影を進めているが、本研究は機構での取り組みを越えて、a. 資料個々の内容調査、b. 資料相互の関係分析を通じた全体構造調査を実施し、多言語での構造分析目録の公開、史料機能論研究を土台とする代表的史料の翻刻公開を、内外の日本研究者やキリスト教研究者等との共同調査・研究によって実現すべく、活動を進めている。 初年度は、バチカン図書館所蔵マレガ文書の実物調査を通じ、構造分析のための情報集積に努めると同時に、欧州各国から日本関係の研究者を集め、バチカンでくずし字ワークショップおよび目録研究会を開催した。この取り組みは、マレガ文書の構造分析目録の多言語での作成に連動するものでもある。また、サレジオ大学でも未整理資料の概要調査を実施し、資料の作成・伝来・保存状態などの情報を集約した。さらに国内では、バチカン図書館から納入された古文書デジタル画像データの解読・分析を進めると同時に、バチカンで行われた目録研究会に向けた準備研究会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の各研究班の活動は次の通りである。 ①文書調査整理班(バチカン図書館所蔵マレガ文書)。マレガ文書の読解・分析を通じて文書群構造を把握し、詳細目録を作成する際の基盤となる情報を整えた。これらの活動は、国文学研究資料館に納入されているデジタル画像データと、バチカン図書館での実物調査を通じて行った。②文書調査整理班(サレジオ大学所蔵マレガ文書)。神父個人に関する文書や関連書籍、多言語で書かれた関係者の手紙等が含まれるマレガ関連文書の概要調査を実施した。多くが未整理のため、劣化状況・集合的情報など物理的状態情報の集約に努めた。劣化の激しいものはバチカン図書館で修復を進めている。③類型化・多言語化班。バチカン図書館所蔵分から史料群の全体構造を特定し、目録等の多言語化の準備を行った。また、世界中から多分野の研究者が集うバチカン図書館での情報提供に資するため、目録の他にガイド、用語集や資料集といった導入的研究補助ツールを日本語だけでなく、英語でも作成し、適宜イタリア語を付す作業を開始した。史料翻刻・翻訳は、バチカン図書館から納入されたデジタル画像10袋分(残り11袋分は2016・2017年度に納入)を用いて、1袋から10点ずつ計100点を翻刻・書き下し・現代語に訳し、最重要な文書50点前後を英語に翻訳した。④データ公開班。データベース構築方法について検討した。 上記の活動およびバチカンでの目録研究会は、計画段階から想定されていたが、ヨーロッパでの強い要望を受け、ヨーロッパ各地から研究者を集め、バチカンでくずし字のワークショップを開催することができた。その前段階として国内でも準備研究会を開催し、英語化されたテキストの作成も行うことができた。さらに、目録の多言語化に関連し、イタリアでの目録構造を正確に把握するため、イタリア最大の国立文書館であるヴェネツィアでも調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
初年度と同様に、①文書調査整理班(バチカン図書館所蔵マレガ文書)と②文書調査整理班(サレジオ大学所蔵マレガ文書)は、引き続き資料の分析を行なう。ローマでの集中的な整理作業は、年1~2回を予定し、現地の協力者と連携して、多言語での構造分析目録を作成する環境を整備したい。③類型化・多言語化班も初年度と同様の作業を進めるが、バチカン図書館所蔵分に加えて、サレジオ大学所蔵分の資料の検討を進める。バチカン図書館所蔵分の資料の階層的な構造の大まかな全体像を把握することも目指したい。また、各文書調査整理班の成果を踏まえて、全体研究会も年2回ほど開催する。さらに、研究成果については学界で共有することが望ましいと思われるので、関連する学会との共同によるシンポジウムや研究会を実施したい。 2017年度はEASJ(欧州日本研究学会)の大会で4本の発表から構成されるパネル獲得に成功しており、国際的な共有化を一層進める。バチカンでも昨年に引続き、くずし字ワークショップを行う。さらにフィレンツェでもマレガ文書を例に日本の歴史的文書の特徴について伝える研究会を開催し、イタリアのアーキビストにも日本の文書と文化に対する理解を広める。 さらに、公開予定の目録データベースに画像をサンプル的にリンクさせる。バチカン図書館とサレジオ大学に二分されて収蔵されるマレガ文書を統合して検索できるデータベースシステムの構築方法について検討していく。
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