研究課題/領域番号 |
16H02725
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
西藤 清秀 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 嘱託職員 (80250372)
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研究分担者 |
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 課長 (10250375)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バハレーン / ティロス / 古墳 / 集団墓 / 漆喰 |
研究実績の概要 |
紀元前3世紀から紀元後3世紀におけるバハレーンにおいて活躍したシリア・パルミラの隊商の痕跡を探る本研究は、昨年度から開始し、バハレーン本島の北岸に位置するマカバ古墳群を3次元スキャナーでもって測量調査を実施した。2017年度は、2年目を迎え、本格的な発掘調査を開始した。マカバ古墳群は、東地区と西地区からなり、調査は西地区で行った。西地区には現状では8基あまりの円墳上の古墳を含めた古墳が存在するが、その中で最大での規模を有し、中心的な位置を占める古墳(マカバ第1号墳)を発掘調査の対象とした。 マカバ第1号墳は、直径約60m、高さ約3mの円墳である。調査は、墳丘を4分割するように幅1mのトレンチを4本設定し、掘削した。その結果、東トレンチにて埋葬施設の可能性を示す漆喰の広がりを検出したため、墳丘東南部1/4の掘削を行い、40か所あまりで埋葬施設関係の遺構を検出した。本年度はこれら40基の中で、2基の埋葬施設(F22, F27)を完掘した。基本的に2基の埋葬施設の構造は同じで全長約3m、幅0.7mの長方形の土壙を漆喰で塗って棺とし、そこに遺体を納めていた。棺の蓋は、大型の礫を漆喰で固めて作られており、その後、土砂で覆い、さらにその上を漆喰で覆う形で埋葬施設が設けられていた。2基の埋葬施設は、同じ構造であるが、棺蓋を覆う土砂と漆喰の回数が、F22が1回、F27が2回と棺の覆う様相に異なりを見せていた。2基の棺は徹底的に盗掘を受けており、検出された人骨は粉末化した状態で、多くの情報は得られなかった。副葬品に関してはF22から施釉陶器片等の土器片、F27からは骨製ピン頭部片が撹乱土内から出土した。これらの遺物や棺の状況から両方の埋葬施設が造られたのは、紀元前1世紀から紀元後2世紀頃と思われる。また2017年度には第1号墳以外の古墳を3次元スキャナーにより計測したが、一部計測できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度、本格的に発掘調査を実施することができた。前年度に3次元スキャナーを使用し、作成したマカバ第1号墳の測量図が発掘調査区の設定に際して非常に有効であった。2017年度墳丘の1/4を調査し、検出した40基余りの埋葬施設のうちの2基の調査を行ったが、発掘当初、埋葬施設の構造や盗掘による撹乱に対する理解が調査に反映できず、手間取り、調査の進捗がスムーズではなかった。しかし調査の最終局面では埋葬施設の構造の理解も進み、また盗掘の手法も理解することができた。そのため、来年度以降の発掘は、スムーズに進むと考えている。 現在のところ、バハレーンは政情も安定し、渡航に関しての不安な要素はなく、継続して調査に臨めると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度、マカバ第1号墳の1/4を掘削し40基余りの埋葬施設を検出し、2基を完掘した。しかしながら本研究の目的は、古墳の調査から遺存状況の良い人骨を検出し、それらの化学的分析を通して隊商を編成していたシリア・パルミラ人の動向を知ることにある。そのためには2017年度に調査した2基の埋葬施設のように完璧なまでに盗掘された埋葬施設の調査は避けるべきであると考えている。2017年度の調査によりマカバ第1号墳の埋葬施設の建造の仕方や盗掘の仕方は、ある程度理解できたので、2018年度はまず前年度調査した東南部1/4の埋葬施設40か所余りの表面的な観察から比較的遺存状況の良い埋葬施設を選択し、発掘を行うと同時に、東北部、西北部、南西部の各1/4調査区において埋葬施設の検出に努め、遺存状況の良い人骨を入手すべく、なるべく遺存状況の良い埋葬施設の調査を行うつもりである。さらに遺存状況が良い人骨、特に歯が入手出来れば、化学的な分析を実施したいと考えている。またマカバ古墳群西地区の西端部の3次元スキャナーによる計測が終了していないため、その作業を実施し、この古墳群西地区の全体像を3次元的に把握したいと考えている。
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