研究課題/領域番号 |
16H02725
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
西藤 清秀 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 嘱託職員 (80250372)
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研究分担者 |
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, 附属博物館学芸課, 課長 (10250375)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バハレーン / ティロス / パルミラ / 古墳 / 人骨 |
研究実績の概要 |
バハレーン・マカバ古墳群の調査の目的は、シリア・パルミラ人がティロス期(紀元前330年~紀元後629年)の文化にいかに影響を与えたかを探り、1990年以来調査研究を行ってきた古代パルミラ社会のティロス社会への文化移入を理解することである。パルミラ人は、紀元前1世紀から紀元後3世紀に陸路ばかりでなく、海路にも隊商を編成し、東はインドまで進出している。そのためバハレーンは、格好の寄港地・基地として利用され、パルミラ人との交流は強く、その影響はパルミラ人のティロス社会への進出も生み出している。したがって、本調査によって、ティロス期の墓の考古学調査と種々の学術領域や手法を用いて、パルミラ社会とティロス社会の交流を可視化することを目的とした。 2018年の調査では、棺構造の理解が発掘調査を進展させ、7基の漆喰棺を発掘することができ、ティロス期の遺体埋葬法や副葬品のあり方の理解を進める結果をもたらした。特に6基のうちの1基(F-0060)は未盗掘墓であり、乳児が埋葬されていた。この乳児は多くの装身具を身に付け、首にはガラス製玉、紅玉髄製玉、水晶製玉の首飾り、左右の手首にはガラス製玉腕輪、左右の足首には青銅製の足輪、右の足首にはガラス製玉の足輪がはめられていた。また胸の上からは着衣を留める鉄製ピンが出土し、実際に身に付けていたと思われる。さらに体の右胴部に沿うように青銅製ピンが置かれていた。我々の目的とするパルミラ人や東地中海からの人々の関わりを探るという点において、今回出土した人骨とティロスと同時期の古墳を発掘するフランス隊から提供を受けた人骨を理化学的に分析することにより、今後の研究を進める上に大いに役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年、本格的に調査に取り掛かり、2月に第一次調査としてマカバ古墳群全体と第1号墳の3次元計測調査、10月から12月に第二次調査としてマカバ1号墳の発掘調査を本格的に開始したが、当初の期待に反して、徹底した盗掘のため何ら得ることができなかったが、棺の構造がおぼろげながら理解できた。2018年10月から12月には第三次調査としてマカバ1号墳の継続調査を実施した。この調査によって研究目的を達成するために最も重要な人骨を入手でき、パルミラ人や東地中海からの人々のバハレーン・ティロスの関わりを探るという点では、研究の進捗状況はおおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
マカバ1号墳の発掘調査は、バハレーン文化省考古遺産局の全面的な協力のもと順調に進んでいる。今年度も10月下旬から12月上旬にマカバ1号墳のNE地区とSE地区を中心に調査を行う予定である。この2年間の調査により、盗掘の方法、埋葬施設の形態と副葬品の種類と配置等の理解が深まり、調査が効率良く進行できるようになった。さらに今後、採取した人骨サンプルの理化学的調査・分析を通してマカバ1号墳に埋葬された人々のあらゆる情報を抽出したいと考えている。
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