研究課題/領域番号 |
16H02730
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
手嶋 豊 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90197781)
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研究分担者 |
田中 洋 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (10456767)
櫻庭 涼子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (20362808)
網谷 龍介 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (40251433)
淺野 博宣 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40261945)
渋谷 謙次郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (50346277)
関根 由紀 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60379493)
安井 宏樹 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60396695)
飯田 文雄 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70184356)
浦野 由紀子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70309417)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 少子高齢化社会 / 福祉政策 / 医事法 / NPO / 市民参加 |
研究実績の概要 |
まず、福祉システムの予防化に関するBuchananらの理論的研究や、医療・介護等に関する研究などを主に文献に依拠しつつ、福祉予防化の具体例を政策分野毎に整理し、各分野で生じている自己決定・持続可能性の問題を類型化する作業を行った。その結果、①医療分野における福祉予防化の典型例としての成人病予防や、介護分野における福祉予防化の典型例としての軽度介護政策は、全市民一律の法的強制にはなじみにくく、各市民の自己決定にその受容の決定がゆだねられ、それが受容されるかどうかは個人間でばらつきが生じやすく、福祉格差が生じる原因となりやすい傾向があること、②年金分野における福祉予防化の典型例としての公的年金加入の場合には、ひとたびその導入が決定されれば、全市民の一律の法的強制が行われるために、自己決定の困難をめぐる争点は生じにくいが、その反面、福祉システム全体の持続可能性に関する諸問題が争点化しつつある、といった知見を明らかにすることができた。 次に、国内外の本領域の状況について近年の福祉システムを他国や過去の自国の福祉システムなどと多面的に比較し、予防化に伴う問題が発生しやすい時代状況・政策分野や、そうした問題への対応策の諸類型などについて考察した。その結果、①自己決定に委ねられやすい医療・介護分野における予防的な福祉を推進する方策として、適切な自己決定を促進する情報提供やサービス提供料金の操作を通じた誘導等が選択されやすいこと、②年金分野の予防化では、公的年金をめぐって福祉システム全体の持続可能性に関する懸念への対応策として、私的な任意年金への加入を推奨する国家が多いが、それら私的年金の業績悪化等を契機として、各国で市民の自己決定と政府の説明責任をめぐる新たな論争が生じつつあること等の知見が明らかになった。 高齢者法とされる分野についての情報収集と外国研究者との交流も展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題に関連する日本語での研究論文の公表や学会報告が当初の予定通り相当数行われてきている。さらに、外国語による学会発表などの成果公表も、当初の予定していた以上に、順調に進んでいる。 内外の資料収集についても、予定どおり順調に作業が進んでいると解されるため、上記の様に判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、当初の研究計画に従い、ニーズ対応型・市民参加型福祉システムの委任化をめぐる諸問題の考察を継続する予定である。そのために、国内外での調査、研究者交流を続行すると共に、海外共同研究者を積極的に日本に招へいし、内外学会での研究報告や、学術雑誌への投稿を継続する。 さらに、本研究の最終的な成果である外国語書籍の発刊をめざして、その出版準備作業を加速させる予定である。
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