研究課題
平成28年度は,モンゴル地域を中心に北アジアの広範な地域で地質調査を展開し,微小領域マルチアイソトープ精密年代測定を実施して大陸形成に関わる衝突過程の理解を飛躍的に進展させ,ユーラシア大陸極東部(アジア大陸)全域における衝突型造山帯形成に関わる大陸進化過程を明らかにするために,以下の研究を実施した.得られた研究成果を国内・国際学会で発表するとともに国際誌等に公表している.1.北部アジア地域における,モンゴル・カザフスタン地塊とシベリア地塊の衝突境界が想定されるモンゴル・ハンガイ山地,ヘンティ山地を重点的に調査し,地殻深部由来の変成岩および関連する深成岩類について試料採取を行った.なお,北中国・タリム地塊とモンゴル・カザフスタン地塊の境界が想定されるモンゴル・アルタイ山脈についても調査を予定したが,研究代表者の入院・加療により,次年度への繰り越し課題とした.採取した変成岩類・深成岩類について,精密な岩石反応組織の解析と極微小領域の元素マッピングを行い,岩石形成プロセスの解析を精密化した.2.最適試料を選定して,蛍光X線分析・LA-ICP-MS等による全岩化学分析を行い,LA-MC-ICP-MSによるHfおよびFe同位体分析を加味して,変成岩の原岩および深成岩類のマグマ特性等を明らかにして,地殻進化過程を考察した.3.選別した最適試料を用いて, ジルコンU-Pb年代測定およびモナザイトU-Pb-Th化学年代測定を実施し,ザクロ石の組成累帯構造にU-Pb系などの微小領域年代測定をリンクさせ,変成作用の時間軸を精密解析する検討を開始した.一方,当該年度に予定したSm-Nd,Rb-Sr同位体分析,ならびにU-Pb SHRIMP年代測定は,分析装置の空き時間等が確保できなかったため,次年度以降に実施することにした.
2: おおむね順調に進展している
当初予定の研究計画のうち,モンゴル・アルタイ山脈を除く地域の地質調査,試料採取を実施し,国内における分析・解析工程も極めて順調に進行している.また,関連して研究を展開している他のアジア大陸地域に関する成果成果と合わせ,成果公表も順調に進行している.一方,アルタイ山脈調査は次年度に繰り越し課題としたため,②おおむね順調と判断した.
アジア地域では,微小大陸衝突・集合時に衝突型変成作用で形成されたとみなされる大陸地殻深部由来の高度変成岩類および衝突型火成岩類が多数分布する.これらの造山帯構成岩石に対して,未だ古典的な地質時代区分および地質形成テクトニクスの概念により,その形成時代が太古代および原生代とみなされている場合が多い.本研究では,地道な地質調査と試料採取を実施し,変成岩岩石学・火成岩岩石学的精密解析とリンクさせた精密な地質年代学的研究を展開して,新たな大陸形成モデルを提唱するために,北部アジア地域で研究展開している.次年度以降は,シベリア地域での研究進展を図るため,ロシア研究機関との積極的な交流を図る.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
Journal of Minaralogical and Petrological Sciences
巻: 111 ページ: 145-156
doi: 10.2465/jmps.151227
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Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
巻: 111 ページ: 170-180
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doi: 10.2465/jmps.150727
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