研究課題
北東アジア地域を含むアジア全域における大陸形成プロセスを明らかにするため，アジア大陸各地ならびに日本列島各地で地質調査を実施し，微小領域精密年代測定および岩石化学的・鉱物化学的解析を行って大陸形成に関わる衝突過程の理解を進展させた．これらは，ユーラシア大陸極東部（アジア大陸）全域における衝突型造山帯形成に関わる大陸進化過程の解明ならびに日本列島形成過程の解明に必須の研究であり，詳細は以下の通りである．得られた研究成果を国内・国際学会で発表するとともに国際誌等に公表している．１．北部アジア地域における，シベリア地塊南縁部の衝突型造山運動が想定されるモンゴル西部地域を重点的に調査し，地殻深部由来の変成岩および関連する深成岩類について試料採取を行った．また，北部アジア大陸形成後の大陸進化を明らかにするため，関連地域となるミャンマー北部・モゴック地域や日本海拡大前のアジア大陸東縁部で形成され日本列島の先白亜系変成・火成岩帯についても調査を実施し，多彩な試料採取を行った．採取した変成岩類・深成岩類および既存の岩石試料について，精密な岩石反応組織の解析と極微小領域の元素マッピングを行い，岩石形成プロセス解析を精密化した．２．最適試料を選定して，蛍光Ｘ線分析・LA-ICP-MS等による全岩化学分析を行い，変成岩の原岩および深成岩類のマグマ特性等を明らかにするとともに，鉱物化学組成解析に基づく変成作用の精密解析を実施して地殻進化過程を考察した．３．選別した最適試料を用いて， ジルコンU-Pb年代測定およびモナザイトU-Pb-Th化学年代測定を実施し，ザクロ石の組成累帯構造にU-Pb系などの微小領域年代測定をリンクさせ，変成作用の時間軸を精密解析した．４．南～中央地域における新たな微小大陸衝突現象の解析も開始し，アジア大陸形成に関する新たな研究方向を見出すためのデータ収集を展開した．
2: おおむね順調に進展している
（理由）平成30年度は，前年度までに蓄積された調査結果をフィードバックさせながら調査困難地域で課題の多い西端部モンゴル地域やミャンマー・モゴック地域の調査を実施し，北部アジア地域については，ゴビ・アルタイ地域試料の継続解析を実施するとともに，ハンガイ山地西部の岩石学的解析も開始した．国内における既存試料の分析・解析作業は，モンゴル・ヘンティ山地，アルタイ山脈およびシベリア地塊南縁部，ならびにアジア大陸全域の大陸形成に関連するベトナム・コンツム地域等の岩石試料をもとに展開され，精密年代測定に基づく造山運動プロセスが解析された．また，南～中央アジアのミャンマー・モーメイック地域の超高温変成岩やアフガニスタン・カブール地域の変成岩に関する岩石学的・同位体年代学的研究も開始され，アジア大陸形成テクトニクスの解明に向けて研究深化が進んでいる．一方，ロシア研究機関との共同調査を実施したにも関わらず，ロシアとの試料送付が実施できず，新たな研究進展は見られなかった．
アジア地域では，微小大陸衝突・集合時に衝突型変成作用で形成されたとみなされる大陸地殻深部由来の高度変成岩類および衝突型火成岩類が多数分布する．これらの造山帯構成岩石に対して，未だ古典的な地質時代区分および地質形成テクトニクスの概念により，その形成時代が太古代および原生代とみなされている場合が多い．本研究では，地道な地質調査と試料採取を実施し，変成岩岩石学・火成岩岩石学的精密解析とリンクさせた精密な地質年代学的研究を展開して，新たな大陸形成モデルを提唱するために，北部アジア地域ならびに広域アジア地域で研究展開している．本研究の最終年度は，北部アジア地域での研究進展を一層強化するために，中国，モンゴル，ロシアとの共同調査を一層強化するとともに，南～中央アジア地域で見出された新たな岩石試料に対しても同位体年代学的解析を実施し，アジア大陸全域における大陸形成過程解明をさらに深化させる予定である．
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 6件、 査読あり 17件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 20件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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