研究課題/領域番号 |
16H02744
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
小長井 一男 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (50126471)
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研究分担者 |
竹内 渉 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (50451878)
松島 亘志 筑波大学, システム情報系, 教授 (60251625)
清田 隆 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70431814)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地震防災 / 国土保全 / 地震工学 |
研究実績の概要 |
2015年4月のネパール・ゴルカ地震は,その規模(Mw=7.8),震源から首都までの距離(約77km),そして被害額の対GDP比(約1/3)という点で1923 年の関東地震に匹敵する. その関東地震で日本の土砂災害対策費が大幅に跳ね上がったことを考えれば,世界一急峻な山岳地を擁するネパールで,斜面災害の影響は今後一層深刻さを増すであろう.ネパールなど最貧国とされる国々では,当面顕在化しない吾威は往々にして置き去られ,結果的に復興の大きな阻害要因になりかねない.こうした事情から,不安定斜面とそのリスクを現地の可観測情報から抽出し,定量的に明示していくことが本研究の目的である.カトマンズ北西の急峻な山岳地帯をトリスリ川沿いに通過するパサン ・ ラミュハイウェー沿いの斜面は2015年のゴルカ地展で大きく崩壊したが、いまだに大量の不安定な土塊が残されている。これまで継続的に地形変形観測を進め、トリスリ川に 崩落した土塊に加え斜面上に残る不安定土塊量の推定を行い、 これらの知見を国際学術誌(Landslides)などに投稿した。この一連の調査で、 不安定土塊の中には変形が加速しているものがあることも指摘されたが、折しも2017年8月にネパールを大豪雨が襲い、 不パール全75州の内37州で斜面崩壊や洪水被害が報告されている。この新たな事態を踏まえ平成30年度に予定されていた調査研究費の一部を前倒し使用して豪雨の影響評価を行った。またカトマンズ市内の低丘陵地帯を横断する主要ハイウェーを横切って現れた地盤の側方流動についても調査を進め、地下水面下のシルト層での地盤の軟弱化が原因として最も可能性の高いものであることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ramcheの斜面にウェザーステーションを2016年度に設置したが、これによって2017年度の8月の豪雨を観測することができた。また斜面崩壊を発生、流動、堆積のプロセスに分けて、それぞれを支配するパラメータの組み合わせを様々に変え最適解を模索する斜面災害プレディクターを改良し、予測精度を高めることができた。そしてTrishuli川沿いの6.25km×6.25kmの観測対象範囲に残る不安定土塊の総量の推定結果を踏まえ、ネパール復興庁(National Reconstruction Authority, Nepal)と今後の対応策を議論できる環境が整った。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度で斜面崩壊の残存リスクの評価を試みた6.25km×6.25kmのTrishuli河谷沿いにはには、ネパールの戦略道路網に含まれるパサンラミュハイウェイや、電力需要の増大に応じて計画された60MW規模のUpper Trishuli 3A水力発電所(建設中)が含まれる。流れ込んだ崩壊土砂による河床の上昇はさぼど深刻にはならないと予想されるが、谷底には建設が再開された発電所に通じる道路があり、また地震前に谷壁で生活していた住民の避難キャンプがあって、これらが直接的に崩壊土砂の危険にさらされることになる。示されたハザードマップを踏めて、個別の課題についての対応策を議論する。 またカトマンズ市内の低丘陵地帯を横断する主要ハイウェーを横切って現れた地盤の側方流動については、地下水面下のシルト層での地盤の軟弱化が原因となった可能性が大きいと推定されたので、地下水くみ上げによる地下水面の低下など可能な対応について具体化を図っていく。
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