研究課題
伐採や火災などの人間活動の影響によって東南アジアの森林は急速に消失・劣化し、地域経済や地域環境の深刻な問題となっている。一般に熱帯地域での森林再生は難しいが、その原因はよく分かっていない。近年、温帯域での研究によって、森林を構成する樹木の多くは菌根菌という根に共生する菌類に養分吸収の大部分を依存しており、樹木の定着や森林の回復に菌根菌が決定的な役割を果たしていることが明らかになってきた。研究代表者らのこれまでのプロジェクトによって、一部の熱帯樹木の菌根菌群集と実生定着への影響が明らかにされたものの、その知見は極めて断片的である。そこで本研究では、東南アジア地域において、攪乱から回復途上にある二次林を対象に、主要樹木に共生する菌根菌群集と埋土胞子群集を明らかにする。今年度はTristaniopsis樹木の成長におよぼす菌根菌の影響を調べるため、オーストラリアからTristaniopsisの種子を購入して播種したものの、全く発芽しなかった。空輸時の低温で発芽能力を失ってしまう可能性があり、国内でのこの樹木の実験は難しいと考えられた。また、バンカ島で得られた菌根菌群集データと比較するため、インドネシアの他地域においてTristaniopsisが優占する林分の探索を行った。その結果、中央カリマンタンの複数箇所で適地が見つかり、現地調査の許可や現地カウンターパートとの調整などを行なった。現地調査は2018年5月に実施予定である。台湾では菌根菌の埋土胞子実験の実施状況を確認した。一部のサンプルはDNA解析を行なった。
3: やや遅れている
研究を主に担当している留学生(インドネシア科学院(LIPI)の研究員)が修士から博士に進学した際、公用パスポートビザ更新申請をおこなった。しかし、LIPIの承認手続きの遅れによって1年以上頓挫しており、現地調査の実施を延期せざるを得なかったため計画に遅れが出ている。こうした現地国政府の事態は予期できないものである。
LIPIとの交渉によって、公用パスポートビザの更新が間に合わなくても、緊急事態による渡航ということで現地調査を実施す方向で調整する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
ISME Journal
巻: 12 ページ: 1806-1816
10.1038/s41396-018-0088-y