研究課題/領域番号 |
16H02763
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 章 京都大学, 農学研究科, 教授 (80157742)
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研究分担者 |
西村 伸一 岡山大学, 環境管理センター, 教授 (30198501)
藤澤 和謙 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30510218)
濱 武英 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (30512008)
藤原 正幸 京都大学, 農学研究科, 教授 (40253322)
渡邉 紹裕 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (50175105)
林 泰一 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携教授 (10111981)
福元 豊 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (60757350)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 溜池 / 灌漑システム / 機能診断 / 地域水循環 / 気象観測 |
研究実績の概要 |
研究代表者の所属する京都大学と大学間学術交流協定を締結しているインド工科大学グワハティ校(IITG)およびカンプール校(IITK)土木工学科教員と協議を行い、灌漑システムにおける地域水循環やため池堤体調査に関する共同研究の実施を基本的に合意した。本年度はインド・アッサム州において、茶園の現地視察、河川堤防調査、気象観測を、メガラヤ州ではため池堤体調査と気象観測をIITGの協力のもとで実施した。茶園の視察は計2回実施し、4つの茶園の状況を確認した。農園管理者や行政機関へのヒアリングにより、アッサム州の茶栽培における灌漑の導入の背景、水源や送水方法などの灌漑システムの構成、現在の課題に関する情報を収集した。
堤体調査項目は、前者において簡易動的貫入試験、後者においてスウェーデン式サウンディング試験であり、堤防内部の強度分布を同定した。同時にIITGグループによる弾性波探査も実施され、サウンディング試験結果と比較検討を行うとともに、日本の堤防の状況との比較検討を行う準備を進めた。
気象観測につき、アッサム州ではブラマプトラ河の南北両岸の流域を中心として、州全域にわたる15地点に観測点、メガラヤ州では東部のKhasi Hillの尾根に東西60kmにわたって5地点に観測点を配置し、降水観測網を構築した。この結果、高い時間分解能、稠密な空間分解能を持つ降水過程を評価できた。加えてメガラヤ州では、急峻な谷間においても新たに2地点で降水観測を開始し、降水の高度分布について解析を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
灌漑システムにつき、IITG側から研究協力者として適任者が提供され、彼らとともに現地の調査地の選定作業を行った。当初の予定では水田の灌漑システムが研究対象であったが、社会的重要性や研究の実施可能性を考慮して、茶園の灌漑システムに研究対象を変更した。研究協力者との議論で茶園の灌漑システムの課題を整理し、今後の研究方法を具体化させた。
堤防調査については4月から試験項目について検討を行い、試験装置の準備を進めた。10月にはIITGとともに現地の試験サイトを選定する作業を行い上記2つのサイトを決定して、10月末から試験装置のインドへの輸出作業を行った。さらに、選定されたサイトでの試験許可申請を現地の関係各所に対して行った。最終的に平成29年3月に現地試験を実施することができ、現在試験結果を取りまとめている。
気象観測について、平成28年3月にインド北東部のアッサム州15地点、メガラヤ州7地点に稠密に配置した気象観測網において、現地のIITGやNorth Eastern Hill Universityなどと協力して、気象データの回収および観測機器の維持管理を行った。観測はおおむね順調であり、観測資料を取りまとめている。予備的な解析から、平成28年度における当該地域の雨季降水量は、例年に比べて数10%少ないことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
灌漑システムにつき、研究対象の変更はあったが,予定通り当該地域の灌漑に関する情報収集を行い、調査地を決定することができた。現地関係者からも研究方法に関して理解と協力をとりつけた。今後の予定では、IITGと研究作業の分担について打合せを行い、試料採取および水質や土壌分析を行う。また、調査地における水文観測システムを整備し、観測を開始する予定である。堤体調査では現地試験を当初の目的通りに実施することができた。今後は、この試験結果をもとに統計解析を進める予定である。
堤体解析は試験結果の統計モデル化と、これに基づく地質統計シミュレーションから構成される。解析によって堤体の内部強度の分布を可視化することが可能となる。これらの解析結果と、従来から実施してきた日本国内での結果を比較検討し、それぞれの国における堤体の状況を明らかにする予定である。29年度はIITGで催される日印地盤工学ワークショップで成果を発表する予定である。
気象観測については、回収した観測資料を基にしてモンスーン季の降水量の時空間分布を明らかにする。高い時間分解能で、稠密な空間分布の観測資料が利用できるので、降水過程の季節変化、季節内変動、日変化について解析し、その特徴を明らかにする。これらの成果はインドで開催しれるInternational Conference of Tropical Meteorologyなどで発表する予定である。今後は、この降水特性とインドの灌漑との関係について議論を進める。
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