研究課題
平成28年度に実施した、インドアッサム州の河川堤防とメガラヤ州の貯水池堤防のサウンディング調査結果の解析を行い、これらの構造物の内部診断を行った。河川堤防においては、簡易動的貫入試験を実施し、貯水池の堤体においてはスウェーデン式サンディング試験を実施した。平成29年度は、これらの結果から堤体内部の統計モデルを確定し、条件付シミュレーションを実施することによって内部の強度分布を可視化した。さらに、日本の事例と比較し、インドの堤防の特性を明らかにした。最終的に、これらの結果を日印国際ワークショップで発表した。インド・アッサム地方の茶園における水及び窒素循環を明らかとする目的で、対象とする茶園に気象観測機器を設置し、2017年8月より気象データを収集するとともに、2018年3月より地下水位観測のために観測井戸に水位計を設置して観測を続けている。観測データは、インド工科大学グワハティ校(IITG)土木学科教員の協力により、日本で確認できるようになっている。また、茶園の土壌の粒度分析い、シルトロームに分類できることが分かった。平成28年度から継続して、インド北東部のアッサム州およびメガラヤ州で、気象観測を実施した。アッサム州のブラマプトラ河の南北両岸の流域を中心として、州全域にわたる15地点の観測点、メガラヤ州では、東部のKhasi Hillの尾根に、東西60kmにわたって7地点に観測点を配置し、降水観測網を構築してきた。この結果、高い時間分解能、稠密な空間分解能を持つ降水過程を評価できた。メガラヤ州では、加えて、深い谷間(高さ1km)の2地点で降水観測を実施し、降水の高度分布についても解析した。また。雨滴粒度計を2地点に配置して、降水の量的な分布だけでなく、降水過程の物理的な議論ができる体制を整えた。
1: 当初の計画以上に進展している
平成29年度は、結果の解析を行うとともに、研究成果の公表を行うことができた。1ケースずつではあるが、河川堤防と貯水池堤防で同様の試験を行った日本の事例との比較も行うことができ、日本とインドの堤防の類似点と相違点を見いだすことができた。また、このプロジェクトはIIT Guwahatiとの共同研究として推進し、成果を公表することができた。計画通り、2017年度に設置できた気象観測装置および地下水位計により、水文データの蓄積が進んでいるとともに、土壌分析もIITGの共同研究者の協力のもとデータの蓄積が進んでいる。また、茶園における水・窒素循環モデルの構築に取り組み始め、鉛直一次元モデルの原型を完成させた。事例対象とする茶園とアッサム州の茶の生産や灌漑に関する基礎的な統計資料の収集をIIT-Guwahatiの研究者に依頼しているが、なお収集整理作業が継続しており、平成29年度末で入手に至っていない。茶の生育と気象・灌漑を定量的に評価するモデルとしては、FAOが開発しているAquaCropを一部修正して適用するのが適当と判断し、その適応の準備を進めている。将来の気候変動シナリオについては、参加している文科省「創生プログラム」や「統合プログラム」による成果の活用の道筋を整えた。平成29年3月に、インド北東部のアッサム州15地点、メガラヤ州7地点に稠密に配置した気象観測網で、現地のIndian Institute of Technology、 GuwahatiやNorth Eastern Hill Universityなどと協力して、気象データの回収および観測機器の維持管理を行い、観測はおおむね順調であったことを確認できた。予備的な解析から、平成29年度の降水量は全体としては、平成28年度に引き続き、例年に比べて数10%少ない。
今後、インドにおける試験ケース(サイト)を増やすことによって、研究成果に一般性を持たせることができると考えられる。平成30年度は、IIS Bangaloreの協力を得て、Bangalore周辺地域における同様の試験実施を検討中であり、前試験地とは気候が大きく異なることから、試験結果に違った傾向を見出せることが期待される。平成30年度においては、気象観測装置と地下水位計により、水文データの蓄積を引き続き進めるとともに、水質および土壌データの整備を本格化させる。水質については、灌漑時の表流水のみでなく、地下水の水質について調査する。また、土壌水分・ポテンシャルセンサーを新たに現地に設置し、土壌内の水分の詳細なデータを収集する。並行して、水・窒素移動シミュレーションモデルの2次元化に取り組む。さらに、茶の生育・灌漑モデルの検討および気候変動シナリオに関するデータを収集する。事例とする茶園や流域の基礎資料の収集・整理を進める。とくに現地の共同研究者だけでなく、現地の他の研究機関・行政機関や国際機関からの入手も検討する。導入を検討しているFAO-AquaCropのインドの茶への適用に必要な修正を行い、共同研究者が進める灌漑地区の水・水質動態のシミュレーションモデルとのネスティングも進め、より総合的なモデルの開発を進める。引き続き、回収した観測資料から、インド亜大陸北東部のモンスーン季の降水量の時空間分布を明らかにする。これまでに無い高時分解能を持つ、稠密な空間分布の観測資料を利用して、降水過程の季節変化、季節内変動、日変化について解析し、の特徴を明らかにする。雨滴粒度の観測から、降水過程の質の変化についても議論する。これらの成果は、インドなどで開催される国際学会で、発表する予定である。今後は、この降水特性と、インドの灌漑との関係についても考察を進める。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (31件) (うち国際共著 1件、 査読あり 20件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 8件、 招待講演 3件)
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