研究実績の概要 |
平成31年(令和元年度)は、9月および2月にウガンダ渡航を行い、調査地である首都カンパラ市周辺のゴミ処理場および屠殺場に飛来する野鳥(アフリカハゲコウLeptoptilos crumeniferus )の糞便から、薬剤耐性菌の検索を行うとともに、抗菌性を示す乳酸菌の分離を行った。抗生物質耐性菌のベクターとなる野鳥の生息域にある表面水についても薬剤耐性菌の検索を行った。アフリカハゲコウ糞便5試料から多剤耐性のESBL産生大腸菌7株を分離した。これらの大腸菌はすべて, ABPC、CEZ、CTX、およびSTに高度耐性で、加えて一部の菌株にはGM, TC, NA, CPFX, CP高度耐性も検出された。これらの菌株は、CTX-M遺伝子型からCTX-M-1群産生株と判定された。糞便試料に加えて、表面水の7試料から17株の多剤耐性大腸菌が単離された。これらの内、16株がCTX-M-1群に属するESBL産生大腸菌であったほか、1菌株はNDM-5産生によるIPM耐性株であった。前年度までの家畜生体、屠体から分離される薬剤耐性大腸菌がTC耐性にほぼ限定されていたことに比べると、人社会のなかで生活する野生動物、特にスカベンジャー動物が、ESBL産生大腸菌など医療上問題となる細菌の有力な媒介者となっていることが明らかとなった。 一方で、アフリカハゲコウ新鮮糞から分離された75株の乳酸菌(Lactobacillus spp.)と前年度までに分離された30菌株の乳酸菌をあわせてニワトリ由来大腸菌10775-1株に対する抗菌性を検査したところ、33株に乳酸以外の低分子抗菌性成分の存在することが示唆された。 30 年度の成果をまとめた論文をFoodborne Pathogens and Disease誌に投稿し受理された。現在印刷中である。
|