研究課題
ゲノムデータのコストが急速に縮小しており、今後この傾向はますます強くなっていく。これに伴い集団遺伝の方法論も進化しているが、データの性格の質的な変化に十分に対応できているとは言えない。本研究では特に、詳細な分子生物地理学的な情報を得るための時空間統計モデルと推定手法を開発することを目的とした。プロジェクトでは、アジア・オセアニアに広域に棲息する多食性の重要害虫である、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura) について、詳細な空間的集団構造の分析を行った。また、広範囲に混じり合う海洋生物において、水温や塩分などの環境や増養殖に影響されて生成される遺伝的な不均質性の微かなシグナルを高感度に検出する方法を提示し、プログラムパッケージを公開した。さらに、研究を進める中で、分子進化速度が遺伝子に働く機能的な制約の強さと関連していることに注目して、ゲノムと形質の種間比較から生活史の形質の遺伝的背景を明らかにする方法を提案した。最終年度となる本年度は、日本産淡水魚の分子生物地理研究において、種内の置き換わりは無視できない要素であることを主張する論文をまとめた。現在査読中である。また、集団ゲノムと形質、環境のデータを統合し、グラフィカルモデルを通して地域的変異から環境への適応とその遺伝的背景を包括的に捉える方法を開発した。ビッグデータの解析ではベイズの枠組みが中心的な役割を担うが、そこでは実用的な時間内に答えを出すアルゴリズムの開発が最大の課題となる。本研究では近年勃興してきた変分法をゲノム進化の推測に導入し、その有効性を証明した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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