研究課題/領域番号 |
16H02790
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前園 宜彦 九州大学, 数理学研究院, 教授 (30173701)
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研究分担者 |
藤井 良宜 宮崎大学, 教育学部, 教授 (10218985)
寒河江 雅彦 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (20215669)
西井 龍映 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40127684)
松井 秀俊 滋賀大学, データサイエンス教育研究センター, 准教授 (90633305)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ノンパラメトリック / カーネル法 / ハザード関数 / 疑似尤度 / 画像解析 / 漸近理論 / クラスタリング / 情報量規準 |
研究実績の概要 |
本研究では多様な発展を遂げているノンパラメトリックな統計的推測手法の相互の関連を明らかにし、各研究で得られている成果を他の手法の改善に役立てると共に、相互の弱点を補完するような新たな統計手法の構築を図り、高精度な統計的推測法を開発することを目指して研究しており、平成28年度は下記の研究成果が得られた。 1.カーネル法を利用した密度比推定量の分布のEdgeworth展開を求め、その有効性を理論的に示した。また比の直接型推定量の改良を提案し、その性質をシミュレーションで検証した。2.推定する密度関数の定義域が有界な場合に生じる境界問題に対して、問題を解決する新たな推定量を提案し、その性質を明らかにした。3.生物統計などでリスクを計る重要な尺度であるハザード関数のノンパラメトリック推定について、全く新しい観点から直接推定する方法を開発し、その有効性を理論的に示した。4.方向統計学における新たなノンパラメトリック推測法を開発し、その有効性を示した。5.有効な変数を選択する新たな統計手法を開発し、実データへの適用を行った。これにより、有効な遺伝情報を引き出すことに成功した。6.多次元非正規分布に対する疑似尤度の構築に成功し、確率過程についての適用法を開発した。またその理論的な性質も明らかにした。7.変化点の検出モデルに対する情報量規準を導出し、その性質を明らかにするとともに、実データへの適用の良さを示すことに成功した。8.非線形混合効果モデルに基づく関数データクラスタリング法を開発し、その有効性を示すことに成功した。9.シンポジウムを2回共催し、最新の統計理論の研究及びその適用についての情報を収集し、ノンパラメトリック推測法の新たな研究の方向性について参加者からアドバイスを得ることができた。 これらの成果は今投稿を準備しており、今後国際誌等に掲載することを目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度はノンパラメトリック法研究の主要なテーマ1つであるカーネル法研究において新たなアプローチ使って、これまでに提案されている推測法を改善する手法の開発に成功した。このアプローチは他のカーネル型推定にも適用可能なものである。また比の形で表される関数の推定として経験分布関数での積分で表現される新しい推定量を提案し、その有効性を理論的に示すとともにシミュレーションでも検証した。また円周上の密度関数のノンパラメトリック推定に成功しており、今後これを発展させて実データへの適用も行い、手法の改善も並行して研究していく予定である。さらに画像解析、変数選択、生存時間解析などの応用分野への適用を行い、手法の有効性の検証とさらなる精度の改良を行っていく。遺伝情報の解析におけるノンパラメトリック法についても適用の調整を行い、その過程で理論研究へのフィードバックを図り、高精度の推測法の開発を目指していく。これらの成果はノンパラメトリック推測の基礎となるもので、研究の進捗状況は良好と判断される。今後は得られた手法の実データに対する適用も行っていく予定である。また理論的な性質についても高次の有効性について研究し、これまでの手法との融合も目指していく。またすでにいくつかの論文を国際誌に投稿しているが、今後は残りの成果も論文として発表し研究成果の社会への還元も図っていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はノンパラメトリック法研究の主要なテーマであるカーネル法についての新たなアプローチで、これまでに提案されている推測法を改善する手法の開発に成功した。比の形で表される関数の推定としては分母・分子にそれぞれのノンパラメトリック推定量を代入する単純な推定量が提案されている。一般に分母に確率変数がくるとその推定量の分散は大きくなる。この問題を解決するために、経験分布関数での積分で表現される推定量が提案されている。これはあまり今まで注目されていなかったが、28年度はこの方法を修正して新たな推定量を開発することに成功している。このアプローチは他のカーネル型推定にも適用可能なものであり、漸近平均二乗誤差の意味で優れたものになることが予想される。この方法は他にも適用可能なものであり、現在までに3つの新たな推定量の構成に成功し、すでにいくつかの論文を国際誌に投稿している。29年度以降はこの新たなアプローチに対する高次の漸近理論を構築し、新しいノンパラメトリック推測研究の流れを作ることを目指す。また方向統計学において新しく開発した推定方式の理論的な性質を明らかにして、その良さをシミュレーションや実データへの適用で示していく。さらにセミパラメトリックな手法として発展してきた罰則項付き非線形回帰とカーネル型ノンパラメトリック回帰の融合を図り、変数選択に対する推測精度の改善を行っていく。情報量規準のノンパラメトリックな構成法についても検討し、クロス・バリエーションとの関係を明確にしその理論的な性質を求めることを目指す。これらの研究で得られた成果は国際誌に論文として発表し、社会への還元を図っていく。
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