研究課題
本研究では,汎用計算を支援するアクセラレータとしても注目されている FPGAを用いて,サイクルレベルの精度を維持したまま数千個のコアを搭載する大規模メニーコアプロセッサの挙動をエミュレーションする超高速システムの開発に取り組んでいる.開発するシステムは,メニーコアアーキテクチャの研究開発およびメニーコアプロセッサのためのシステムソフトウェアやアプリケーションプログラムの研究開発を加速するものである.平成29年度は,まず雑誌論文として次の2件を執筆した.Verilog HDL に近い記述でコーディングをしながら高速な並列シミュレーションが可能な ArchHDLと呼ばれる言語とライブラリを開発してシミュレーションの高速化を目指しているが,このArchHDLの有用性を示す論文を電子情報通信学会のトランザクションIEICE Transactions on Information and Systemsに投稿し,採録・掲載されている.また,開発したFPGAを用いたNoCエミュレーションシステムを構築する際の効率的な時分割手法と制御方式を示した研究成果をACM Transactions on Reconfigurable Technology and Systems (TRETS) に投稿し,採録・掲載されている.得られた実績の一部を国際会議にて発表した.構築しているNoCをターゲットとする超高速エミュレーションシステムの有用性を示す事例として,Enhanced Long Edge Firstと呼ばれる新しいルーティングアルゴリズムを提案し,構築しているFPGAエミュレーションシステムを用いて大規模NoCをターゲットとする性能評価をおこなった.この成果はソウルで開催された国際会議MCSoC 2017に採録されて発表をおこなった.
2: おおむね順調に進展している
平成29年度には,これまでに開発してきた実行駆動のエミュレーション手法に加えて,メニーコアプロセッサのフルシステムのエミュレーションのために必要となるトレース駆動のエミュレーション方式の検討を進めた.この結果を用いてフルシステムのエミュレーションで必要となるオフチップメモリのアクセスレイテンシを評価し,それを隠蔽するための手法について検討を行った.今後,別途に開発しているメニーコアプロセッサのメモリシステムおよびプロセッサコアと統合して大規模メニーコアプロセッサのエミュレーションシステムへと拡張していく予定である.加えて,平成29年度には,超高速エミュレーションのための方式検討,超高速エミュレーションシステムの評価のために利用するPCクラスタのシステム(計算サーバシステム)を構築した.こちらにFPGA開発用のCADソフトウエアや開発しているArchHDLのシステムをインストールするとともに利用効率を向上させるためのバッチシステムをインストールしてその有用性を確認済みである.平成30年度以降は,構築した計算サーバシステムも活用して開発しているエミュレーションシステムの検証と評価を進めていく.
平成30年度には,これまでに開発してきたNoCのための高性能エミュレーションシステム,メニーコアプロセッサのためのプロセッサコア,メニーコアプロセッサのためのメモリシステム,トレース駆動のエミュレーション方式といった各モジュールを組み合わせて,ターゲットとする大規模メニーコアプロセッサのエミュレーションシステムを実装する.同時に,構築した計算サーバおよび高速シミュレーション環境を用いて構築したエミュレーションシステムの動作検証をおこない,実装するシステムの挙動が正しいことを大規模なベンチマークを用いて確認する必要がある.この研究では,数千個のコアを搭載する大規模メニーコアプロセッサの挙動をサイクルレベルの精度で維持したまま,ソフトウエアによるシミュレーションと比較して大幅な速度向上を得るエミュレーションシステムの開発が目的である.これを定量的に示すために,計算サーバで動作させたソフトウェアシミュレータとFPGAによるエミュレータの性能評価を実施し,今後の最適化のためにFPGAエミュレータのボトルネックを明らかにする.
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
IEICE Transactions on Information and Systems
巻: Vol.E101-E, No.2 ページ: 344-353
10.1587/transinf.2017RCP0012
ACM Transactions on Reconfigurable Technology and Systems
巻: Volume 10, Issue 4 ページ: 1-27
10.1145/3151758