本研究では、汎用計算を支援するアクセラレータとしても注目されているFPGA(field-programmable gate array)を用いて、サイクルレベルの精度を維持したまま数千個のコアを搭載する大規模メニーコアプロセッサの挙動をエミュレーションする超高速システムの開発に取り組んでだ。このシステムは、メニーコアアーキテクチャの研究開発および、メニーコアプロセッサのためのシステムソフトウェアやアプリケーションプログラムの研究開発を加速するためのものである。 最終年度である令和元年度は、これまでに開発してきたトレース駆動のネットワークオンチップのシミュレーションの方式を改良し、パケット間の依存関係を考慮しながら正しくシミュレーションをおこなう洗練された方式を開発した。その成果は、FPGA関連のトップカンファレンスの1つである28th ACM/SIGDA International Symposium on Field-Programmable Gate Arrays (FPGA 2020) に採録されて発表をおこなった。 また、メニーコアを構成するソフトプロセッサとしては、学術的に広く用いられているMIPSアーキテクチャに加えて、オープンなアーキテクチャという点で注目を集めているRISC-Vアーキテクチャに着目して、効率の良い典型的な5段のパイプライン構成を持つスカラプロセッサを実装し、それらのソースコードおよび開発環境をオープンソースとして公開した。加えて、RISC-Vのソフトプロセッサについては、ハードウェア記述言語を用いて、汎用のオペレーティングシステムである Linux を動作させることができる高機能のシステムオンチップを実装し、膨大なシミュレーションによりその動作検証をおこなった。このシステムについてもソースコードおよび開発環境をオープンソースとして公開した。
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