研究課題/領域番号 |
16H02800
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
枝廣 正人 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (50578854)
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研究分担者 |
道木 慎二 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10273260)
安積 卓也 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40582036)
中本 幸一 兵庫県立大学, その他の研究科, 教授 (70382273)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 組込みシステム / 制御システム / マルチコア / コンポーネントシステム / 並列化 |
研究実績の概要 |
本研究は,①マルチコア化により利用可能となる計算機資源の確認,②高並列化を実現する制御アルゴリズム,③マルチコア活用を目指す制御設計とソフトウェア実装を統合するクロスレイヤ設計手法,④並列化モデルのソフトウェアコンポーネント設計,⑤ソフトウェアコンポーネントのマルチコア向け実行環境への実装最適化,から構成される. ①に関しては,①-1)車載電子制御システムユニット(ECU)向けマルチコアの動向,特に車載マイコンにおいて世界トップシェアのルネサス エレクトロニクス社に関し把握し,①-2)現在利用可能なルネサス社製マルチコアマイコンにより動作するRCカー向けブラシレスモータを有する実機環境を構築した.同時にMATLAB/Simulinkによるシミュレーション環境も構築し,シミュレーション環境により実現した制御アルゴリズムが,単一プロセッサ動作ではあるが,実機上でも正しくモータを動作させることを確認した. ②に関しては,永久磁石同期モータ電流制御系のための予測制御アルゴリズムに対する並列アルゴリズムを考案し,逐次改善および並列化を合わせ,60倍以上の高速化を達成し,国内研究会および全国大会にて発表した. ③に関しては,まずは,①で開発した単一プロセッサ向けの制御アルゴリズムに対し,MATLAB/Simulinkにおける設計資産から実機環境向けへの自動コード生成に成功し,制御アルゴリズム設計とソフトウェア実装との行き来を可能とするクロスレイヤ設計の可能性を示した.また,Simulinkモデルに対する高精度シミュレーションの研究を開始し,実機上性能を.シミュレーション環境での性能から見積もるための基礎実験を行った. ④,⑤に関しては,①で開発した制御アルゴリズムから,車載OSプラットフォームであるAUTOSAR環境に自動マッピングする手法を提案し,国際会議で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りに遂行できている. モータドライブシステムに関しては,ルネサスエレクトロニクス社の車載向けマルチコアマイコンRH850/F1Hを利用するRCカー向けブラシレスモータ環境を利用することにより,MATLAB/Simulinkシミュレーション環境の構築,単一プロセッサ向け制御アルゴリズム開発,および単一プロセッサを用いた実機動作,コンポーネント化,車載OSであるAUTOSARプラットフォームでの実行に成功し,クロスレイヤ設計の可能性を示すことができ,計画よりも前倒しで遂行できている.さらに,連携シミュレーションの検討も開始した. 一方,制御アルゴリズムの並列化に関しては,永久磁石同期モータ電流制御系のための予測制御アルゴリズムに関しては60倍を超える性能向上を達成したが,他のアプローチに関しては十分な並列性を抽出することに成功していない.平成29年度は,永久磁石同期モータ電流制御系のための予測制御アルゴリズムに対するさらなる並列性向上や,その他のアプローチについて引き続き検討を進めるが,それに加え,平成28年度に実機環境を構築したシステムを利用し,様々な並列制御アルゴリズムの探究を進める計画である.これにより,本研究の主たるテーマである,高並列化を実現する制御アルゴリズム,マルチコア活用を目指すクロスレイヤ設計手法,並列化モデルのソフトウェアコンポーネント化,マルチコア向け実行環境への実装最適化が実証できると考えている. 以上より,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に沿って以下のように進める.①マルチコア化により利用可能となる計算機資源の確認:①-3)平成28年度に開発したモータ動作環境を用い,マルチコア化により利用可能となる計算機資源について確認する. ②高並列化を実現する制御アルゴリズム:②-2) 平成28年度に検討した手法に対し並列アルゴリズムの検討を進め,計算機資源に対する性能(例えばモータドライブとしての応答性やエネルギー効率)向上の関係について検討し,シミュレーションにて評価を行う.②-3) 実機による制御アルゴリズム評価を行う. ③マルチコア活用を目指す制御設計とソフトウェア実装を統合するクロスレイヤ設計手法:③-2) 平成28年度に進めた検討を継続し,クロスレイヤ設計手法に対し②-2)を適用,さらに,制御器部分に対し④,⑤の環境で評価を行い,車載電子制御ユニット(ECU: Electronic Control Unit)での実現可能性を示す. ④並列化モデルのソフトウェアコンポーネント設計:④-2) ②-2)で提案した制御アルゴリズムをマルチコア向けコンポーネントフレームワークに適用する. ⑤ソフトウェアコンポーネントのマルチコア向け実行環境への実装最適化:⑤-2)マルチコア向けタスク配置最適化手法を,②-2)で提案した制御アルゴリズム,および平成28年度に開発したモータ動作環境に適用し,リアルタイム性を有するシステムに発展させ,さらにタスク配置情報を自動生成し,実行性能を最適化する.この際,ハードウェア性能指標の抽出のため,申請者らも仕様検討に参加しているMulticore Associationのマルチ・メニーコアハードウェア抽象化記述SHIM(*)を利用する.(*) http://www.multicore-association.org/workgroup/shim.php
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