研究課題/領域番号 |
16H02801
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊野 文彦 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (90346172)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | GPU / マルチタスク / 並列分散処理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,家庭やオフィスで日常的に使われているグラフィクスハードウェアGPU(Graphics Processing Unit)上で,超並列計算を実現することである.その実現のために,平成28年度は以下の3点に取り組んだ. まず,最新のPascalアーキテクチャにおいて滑らかな画面更新を保証するマルチタスク技術を確立した.Pascalはプログラムを迅速に切り替えるためのプリエンプション機能をGPUとして初めて搭載している.そこで,プリエンプティブなマルチタスクが滑らかな画面更新と高速な科学技術計算を両立するか否かを検証した.結果,数万個ものスレッドを同時に実行するGPUにおいては,切り替えのオーバヘッドがいまだ大きく,画面の更新が著しく阻害されることを確認できた.また,この問題は開発中のマルチタスク手法により解決できることを明らかにした. 次に,家庭やオフィスで主に使用されているOSとしてWindows 10を用い,複数のWindows機上でメッセージを交換しながら並列計算を進めるMPI(Message Passing Interface)プログラムの実行環境を整備した.この実行環境は,MPIだけでなくGPU向けの開発環境CUDA(Compute Unified Device Architecture)を併用するプログラムを処理できる.これにより,ノード間通信を伴う超並列計算を評価するための実行環境が整った. さらに,大学の研究室において計算資源の日常的な使用状況を監視し,数か月にわたる実行履歴を取得した.この実行履歴を解析した結果,計算機の稼働時間の99%程度は遊休状態であるとみなせることを明らかにした.ただし,マルチタスク手法の特性として,これらの遊休状態にある計算機は一様に科学計算を高速化できるわけではなく,その使用状況に応じて引き出せる実効性能に格差が存在することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実運用に基づいて取得した実行履歴を分析した結果,当初は一様であろうと見込んでいた遊休状態が実際には遊休の度合いに関して区別すべきであることが分かった.そこで,当初計画していた研究課題(計算中断・再開機構の開発)の順序を変更し,開発の核となるPascal向けマルチタスク手法を先行させて確立した.また,次年度以降において開発および評価するための実行環境を整備できていることから進捗は計画通りである.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にしたがい,マルチタスク向けGPUプログラムの自動生成に取り組む予定である.また,マルチタスク手法に関する成果を発表することで外部の研究者からの意見を取り込み,研究の円滑な遂行に役立てる予定である.
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