2018年度に、量子インターネットのエンジニアリングを推進した。 まず最初に、測定型量子計算を用いた量子ネットワークコーディングプロトコルの考案を行い、量子回路シミュレータを用いて性能を分析した。考案されたプロトコルと分析データは論文としてまとめた。 ルールベースアーキテクチャを用いた新しい通信手法の開発のため、シミュレータを開発した。量子ネットワークの目的は任意のノード間で共有される量子状態(distributed quantum state)を生成することである。その過程で、量子エンタングルメントスワッピングを用いて非隣接ノード間での量子状態の共有を行うか、ピュリフィケーションを通してエラーの排除を行うかなどの、意思決定を動的に行わなければいけない。 また、その意思決定は、量子メモリの寿命は非常に短いため、分散的に行わなければいけない。この問題はルールベースアーキテクチャを用いることで解決可能である。ネットワーク上で経路の確保後、コネクションを確立するためのルールの生成を行い、経路上のノードに送信する。 コネクションの確立をリカーシブ(再帰的)に行う手法を開発した。送信元からコネクション確立要求を送信し、経路上のノード情報(量子メモリサイズや品質など)を収集、それらの情報を元に宛先ノードが全てのルールの生成を行う。そして、確立要求に対する応答で、それぞれのルールを対応したノードに分配する。この手法の標準化に向けて、仕様書を作成し、再現可能なシミュレータを開発した。研究の第一段階として、隣接ノード間を繋ぐ量子チャンネルの状態を数値化するため、分散型量子トモグラフィ手法を開発し、シミュレータ上で実装して分析した。このアーキテクチャと評価についての論文は現在査読中である。
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