つながるクルマの基盤となるITSネットワークにおいては,通常の一般的なインターネットの環境と求められる要件が異なる.たとえば,移動に伴って各車両は通常,車両ID,位置と速度の情報を定期的に送信すること基本に,周辺車両がその情報を直接受信することで,その送信元の車両が実際に周辺に存在することが確認可能となる.この特性を利用し,車両情報の偽装行為を対策し閾値を増加させることで,不正データの検知率を向上させる手法を構築した.シミュレータを利用して,有効性の検証を行い,また,悪意のある車両を発見した場合,その車両が移動しても,トラッキングして悪意ある情報を遮断する方法も開発した. プライバシに関して,車両固有IDを利用して通信すれば,そのIDをトラッキングすることにより,特定の個人の車両が通過した位置と時刻が判明するため,本研究では,暫定的な仮想IDを発行し,これを適宜変更しながら通信を行う匿名化方式を開発した.その上,車両等の状態を共通的に管理するプラットフォーム(ダイナミックマップ2.0)を開発するため,同志社大学と名古屋大学が中心となって設立した企業コンソーシアムにおいて,この方式を実装し,実証実験を通して有効性を検証した. 一方,物理的なセキュリティ対策技術の一環として,MUSIC法を利用した車両周辺の人体位置推定技術について検討した.車両側の単一アンテナから電波を送信し,人体からの反射波を含む受信信号を車両側にも設置した複数アンテナで受信することを想定し,その受信信号から車両周辺の人体位置を推定する.推定性能に関する定量的な分析の結果,角度方向の分解能は十分であるものの距離方向については性能改善が必要であることを示した.
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