研究課題/領域番号 |
16H02820
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
上平 員丈 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (50339892)
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研究分担者 |
海野 浩 神奈川工科大学, 情報学部, 助教 (40387080)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マルチメディア情報表現 / 情報ハイディング / 光情報処理 |
研究実績の概要 |
不可視に構造化した光を実空間中に照射し、実空間や実物体の撮像画像に情報を不可視に付加する技術について研究を進め、平成28年度は以下の成果を得た。 (1)撮像画像中における情報埋め込み領域の自動検出法の検討:撮像画像から情報を読み出す際、情報が埋め込まれた領域を自動的に検出する必要がある。情報埋め込み領域に参照用として埋め込んだ高周波パタンを検出することにより領域を検出するアルゴリズムを検討した。シミュレーション結果から、本方法により80%程度の精度で情報の読み出しができることを確認した。今後、100%精度の実現に向けて検討を継続する。 (2)ロバストな情報生成法の確立: 物体表面のテクスチャが不可視パタンと同じ空間周波数成分をもつ場合、撮像画像に埋め込んだ情報を正しく抽出できない恐れがある。このような場合の情報読み出し精度を高めるため冗長情報生成法を検討した。具体的方法として、同一情報を複数の位置に埋め込み、読み出し時にこれらの情報が異なる場合は多数決法により情報を決定する方法を検討した。3か所に情報を埋め込んだ実験結果から、本方法により実用的な読み出し精度が実現できることを明らかにした。 (3)色差信号による変調法の検討:これまで輝度信号の変調により不可視パタンを生成したが、今回、色差信号の変調により不可視パタンを生成した。シミュレーションから輝度信号を変調する場合と同程度の不可視性を維持しながら読み出し精度を改善できることを明らかにした。 (3)時空間変調法の検討: 目に知覚できない微小振幅でフレーム周期で輝度変調した光を照明光として用い、この光で照明された物体の撮像動画を数十フレームにわたって奇数、偶数番目で符号を反転させながら加算して不可視パタンを抽出する方法を検討した。実験結果から、原理確認はできたがノイズが多く、実用に向けてノイズ低減が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度となる平成28年度は、1)撮像画像中における情報埋め込み領域の自動検出法の検討、2)ロバストな情報生成法の確立、の2項目について検討する予定であった。1)については初年度予定の80%程度の進捗であり、平成29年度の第一四半期で残りの課題を解決して100%を達成できる見込みである。一方、2)については、平成28年度の目標をほぼ達成できた。 以上のほか、色差信号による変調法の可能性を示すことができ技術の拡幅化を達成した。さらに、平成29年度以降に予定の時空間変調法について、予備検討を前倒しで行い課題を抽出することができた。 以上から、項目ごとに進捗の差異はあるものの全体的には概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、本研究での基盤である光の構造化技術について、実用化に向けた高度化、拡幅化と、応用分野拡張に向けた新規応用創出の二つの課題を中心に研究を推進していく。 光の構造化技術の高度化、拡幅化については、平成28年度に着手した時空間変調法について、抽出した課題であるノイズ低減に努め、埋め込み情報の読み出しの精度を高めていく。また、携帯用端末などへの適用を想定し、撮像時の手振れなどに対応できる技術を開発し本方法の実用性を高めていく。さらに、光の構造化技術の高度化、拡幅化として、撮像画像をJPEGなどの標準的な圧縮処理を施しても埋め込まれた情報に影響を与えない技術や、屋外での太陽光の下や明るい照明の室内など強力な環境光が存在する条件でも本方法の使用を可能にする単色光を用いる光の構造化技術を開発する。 一方、新規応用分野開拓に関しては、新規応用として、空間に3次元情報を不可視の状態で付加し、撮像した2次元画像から3次元画像を生成する技術の研究を進める。この技術は、光に不可視に含めるパタンの特性を空間の奥行きに依存する特性とし、この光で照射された空間を撮影した画像に奥行情報を不可視に埋め込む技術である。この技術により、通常のカメラで撮像した画像からでも3次元画像を生成できることを立証する。
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