研究課題
「ハブネス」は,高次元空間におけるデータセットに生じる現象である.他の数多くのデータと類似するデータ(「ハブ」と呼ばれる)が出現する現象のことを言う.ハブネスは,次の問題を引き起こすため,データセットの類似検索の価値を低下させる:(1)ハブによる検索結果上位の独占:クエリによらず検索結果の上位を少数のハブが占めること,すなわち,検索結果の上位にハブとなるデータがいわばスパムのように出現すること.(2)検索結果上位に現れにくいデータ数の増大:(ハブとなるデータとは反対に)ほとんどアクセスされないデータの数が増大すること.本年度,私たちは,半教師あり学習の精度改良に成功した.機械学習において,ラベルなしデータを積極的に活用する半教師あり学習は,人手によるラベル付与というコストフルな作業が不要なため,ビッグデータ解析に適すると考えられる.しかし,半教師あり学習において代表的な,k近傍グラフでのラベル伝播によるアプローチは,k近傍グラフに出現しやすいハブノードが(意味あるラベルだけでなく)ノイズも伝播してしまうという問題があった.私たちはこの問題を解決することに成功した(情報検索のトップ国際会議である SIGIR 2017 で成果を発表した).さらに,本年度は,「構造データ(非ベクトル値データ,とくに,バイオ配列データ,単語共起データ)に関わるハブを抑制する」および「ハブ現象を異常値検出に応用する」に関するアイデアの構築と,予備実験によるアイデアの検証まで進むことができた.
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に平成29年度の予定として記した「構造データに関わるハブを抑制する」を,予定どおり達成できたため(成果の外部への発表は平成30年度の予定).
「構造データ(非ベクトル値データ,とくに,バイオ配列データ,単語共起データ)に関わるハブを抑制する」および「ハブ現象を異常値検出に応用する」に関する論文執筆を行う.以上が順調に進んだ場合は,交付申請書に記載した「ハブの生じない近似近傍検索を実現する」に取り掛かる予定である.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
SIGIR '17 Proceedings of the 40th International ACM SIGIR Conference on Research and Development in Information Retrieval
巻: SIGIR '17 Proceedings ページ: 857-860
10.1145/3077136.3080662