研究課題/領域番号 |
16H02830
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安田 雅哉 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (30536313)
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研究分担者 |
青野 良範 国立研究開発法人情報通信研究機構, サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室, 主任研究員 (50611125)
脇 隼人 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (00567597)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 格子暗号 / 格子基底簡約アルゴリズム / LWE問題 / 耐量子暗号 / 最短ベクトル問題 / 整数計画法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近年暗号分野で非常に注目されているLWE(Learning with Errors)問題ベースの格子暗号の解読計算量を解析すると共に、LWEベースの格子準同型暗号の安全パラメータの抽出を行い、暗号方式の性能評価を行うことである。2017年度の研究目標は、LWE問題などの格子暗号の安全性を支える数学問題を効率的に解くアルゴリズムの開発を行い、LWE問題の求解実験を開始することである。2017年度の研究成果として、格子暗号の安全性を支える最短ベクトル問題(Shortest Vector Problem, SVP)を効率的に解く新しい格子基底簡約アルゴリズムの開発を行い、2010年からドイツ・Darmstadt大がWeb上で公開しているSVPチャレンジの102次元から127次元という高い格子次元において、これまでよりも短い格子ベクトルの探索に成功した。さらに、今回開発したアルゴリズムをLWE問題の求解に適用し、既存の解法アルゴリズムよりも高速に解けることを実験的に示すことができた。また、格子問題の解法の1つであるrandom samplingアルゴリズムの正確な解析に成功し、LWEベース暗号を含む格子暗号の解読計算量の上界を評価することが可能となった。さらに、SVPを整数二次計画問題に定式化し、代表的な最適化エンジンであるCPLEXでSVP求解にチャレンジし、50次元程度まで求解可能であることを示すことができた。一方、代表的なLWE準同型暗号スキームを実装し、統計・分析などにおける基礎演算である行列計算を暗号化したまま効率的に計算する手法を開発し、プライバシー保護利活用技術としてLWE格子準同型暗号が利用可能か判定するための準備を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格子暗号の安全性を支える根本的な数学問題であるSVPを効率的に解くアルゴリズムのプロトタイプ開発ができたことで、当初のスケジュール通りLWE問題の求解実験を開始することができた。さらに、代表的なLWE格子準同型暗号の実装を行い、秘匿統計処理や秘匿検索などの性能評価を行う準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性として、これまでに開発したSVP解読アルゴリズムの高速化・最適化を行い、LWE問題解読コンテストの記録更新を行い、LWE問題の具体的なパラメータに対する解読計算量の評価を行う。また、既存の暗号と同程度の安全性を有するLWEパラメータの抽出を行い、2017年度に開発したLWE格子準同型暗号に適用することで、秘匿統計や秘匿検索などの具体的な適用先における暗号方式の性能評価を行う。
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