研究課題/領域番号 |
16H02833
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
堀 洋平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (60530368)
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研究分担者 |
片下 敏宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (90500215)
小笠原 泰弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (30635298)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハードウェアセキュリティ / PUF / SOTB |
研究実績の概要 |
省電力が求められるIoTエッジデバイスに、超低消費電力トランジスタSOTBを適用することは極めて有効である。また、不正機器排除やセキュリティ機能が必須のIoTでは、ICの偽造防止技術PUFが重要となる。ところが、「SOTBを用いて作製したPUF」(以下、SOTB-PUF)は、実現できるかどうか明示的でなく、検証もされていない。本研究では、SOTB-PUFチップの特性解析を行い、SOTB-PUFの実現可能性とその性能・安全性を明らかにする。
本年度は、SOTB PUFチップに対応した実験環境を構築した。申請者は既に別のPUFチップ(TSMC 65nm CMOSで製造)を評価する評価環境を有しており、これをSOTB-PUFに合わせる改変を行った。SOTB-PUFでは従来と動作電圧が異なり、基板電圧も新たに制御する必要があるため、既存ボードの改変を行った。また、SOTB-PUF用のデータ収集プログラムとデータ解析プログラムをC#で開発した。
構築・開発した実験環境および解析プログラムを用いて、SOTB-PUFの動作確認を兼ねて基本的なデータ収集と解析を行った。コア電圧と基板バイアス電圧およびデータ取得タイミングといったパラメータを変えながらデータを取得し、それぞれの環境におけるPUFの特性を評価した。評価の結果、SOTBにおいてもPUFが動作する環境条件が存在することが明らかとなった。また、パラメータをより細かく設定してデータを取得しこれを解析することで、基板バイアス電圧を調整することでPUFの特性を改善できることを明らかにした。この成果をIEEE S3Sに投稿し採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PUFを搭載したICチップの解析の過程で、従来のPUF利用方式では要求性能が満たせないことが判明し、ICチップ解析の継続と論文投稿・学会参加を断念せざるを得なくなった。研究の遂行上、PUF利用方式の再検討とその方式に基づいたICチップの解析が不可欠であるため、研究補助員によるICチップの解析ならびに論文投稿・学会参加を延期する必要が生じた。 PUF利用方式の再検討を行い改めてICチップの解析を行った上で、国際会議IEEE S3Sに投稿し採択された。
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今後の研究の推進方策 |
コア電圧、温度、タイミング、基板バイアス電圧を様々に設定し、SOTB-PUFのデータを大量に収集する。「タイミング」とは、発振しているPUFの信号を捕捉する時刻のことで、タイミングによってPUFの出力が異なり、再現性・ユニーク性等の性能も異なる。(毎回同じタイミングで信号を捕捉することで、同じPUFからは同じ出力が再現されるが、ばらつきの影響で別のPUFとは異なる出力となる。)パラメータは以下を想定している: (1)コア電圧:高速動作の1.0~1.4V間を0.1Vずつ、省電力動作の0.3~0.8V間を0.1Vずつ、(2)温度:製品評価で重要な -40℃、0℃、常温、85℃を含め、11種程度の温度、(3)タイミング:予備実験に基づき11種程度のタイミングを選定、(4)基板バイアス:予備実験に基づき11種程度の基板バイアス電圧を選定。
これらパラメータの組み合わせにより、様々な測定条件下の大量のPUFデータが収集される。これを解析し、SOTB-PUFの環境変化耐性を評価する。電圧や温度が変化してもSOTB-PUFの性能(再現性、ユニーク性等)がほぼ維持され、チップ認証を行う上で実用上問題ないことを示す。また、SOTB-PUFの性能が最大化される最適化なタイミングを明らかにするとともに、PUFとしての性能が維持されるタイミングの範囲を明らかにする。さらに、SOTB-PUFが、どの程度の省電力動作、どの程度の高速動作が可能であるかを明らかにする。すなわち、「基板バイアス電圧」ごとに「正常動作するコア電圧範囲」がどう変化するかを評価する。
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