研究実績の概要 |
本研究では、自己と他者の「一体感」形成の脳メカニズムを探るため、fMRIを用いた脳領野間の機能的結合性解析とNIRS/EEGを用いた2者脳活動同時計測(ハイパースキャニング)を軸として実験を行う。特にミラーシステムと報酬系の機能的結合が自己と他者の一体感を形成する重要な要因であると考え、これを主に解析する。研究項目I(実験I-1, 2)では「応援」を題材として取り上げ、他者の成功によって受け取る代理報酬の量を操作することで脳活動にどのような影響を与えられるかを調べる。研究項目II(実験II-1, 2)では「相互承認」を題材として取り上げ、他者から承認されることが報酬系とミラーシステムのネットワークをどのように賦活するかを検証する。これらを通じて自他の一体感が形成される認知脳メカニズムを明らかにする。 平成28年度は主として、実験I-1「応援におけるミラーシステムと報酬系の機能的結合」および実験II-1「被模倣・被共感の相互承認効果」を進めた。実験I-1では、競争的ゲーム(ジャンケン)を行っている2人のプレイヤーのうちの1人を応援しているときの脳活動をfMRIを用いて計測するために、刺激の作成と皮膚電気反応を用いた予備実験を行った。このとき、勝率の高いプレイヤーと低いプレイヤーを用意し、それぞれのプレイヤーに対する脳・生理反応および主観的な一体感がどのように変化するかを調べた。その結果、勝率の高いプレイヤーに対してのほうが皮膚電気反応と主観的一体感が高まることが確認された。実験II-1では、相互承認の一形態として、他者に自分の行動を模倣されること(被模倣)と他者から共感を受けること(被共感)の効果を調べる実験を行った。本研究では書画被模倣課題を用意し、被験者が書いた図形を模倣する他者(被模倣条件)と模倣しない他者(統制条件)に対する脳活動をfMRIを用いて計測した。
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