本研究では、新たな運動センシングの確立に向けて、A) 基盤技術と拡張機能の確立、B) 非接触・高速性を始めとする独自の性能がもたらす応用展開、C) 高速ビジョンとの融合に基づく時空間把握、D) 実世界の運動物体を高品質かつ瞬時に取り込むダイナミックデジタルアーカイブへの応用の4つのサブテーマに着手する。本年度はサブテーマDに取り組んだ。 まず、これまでに開発した技術をもとに、ダイナミックデジタルアーカイブの具体的な応用案を検討した。検討の結果、有望な応用に向けて、追加の要素技術が必要であることが明らかになった。具体的には、より実用的な局面での展開に向けて、観測シーンを運動に応じて領域分割するとともに、その動きを復元できる技術が必要であった。そこで、視線速度分布を取得可能なドップラーカメラの使用を前提としたアルゴリズムを設計した。本手法は、剛体の運動を3次元の部分空間へ射影することで、動きによる領域分割とその動きの復元を線形的に解くことを可能とするものである。通常の輝度カメラを用いたアプローチに比べて、対象のテクスチャや構造に依存しないだけでなく、効率的かつ安定に問題を解くことができる点で有効であることを確認した。さらに、本手法で着目したドップラーカメラは原理的な実現可能性が示されたのみで、上記のような認識処理と組み合わせたときに動作に耐えうるレベルかは明らかにされていない。そこで、ドップラーカメラの開発にも着手した。
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