研究課題/領域番号 |
16H02849
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
川崎 洋 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80361393)
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研究分担者 |
三鴨 道弘 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (00735269)
日浦 慎作 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40314405)
古川 亮 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (50295838)
小野 智司 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (90363605)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コンピュータビジョン / ライトフィールド / プロジェクタ・カメラシステム |
研究実績の概要 |
本研究では、(A)符号化したアパーチャをプロジェクタのレンズに設置することによるライトフィールド・プロジェクタを構築し、被写界深度の拡大を実現する。さらに、これを実システムで使用するため、(B)ライトフィールド・プロジェクタのキャリブレーション手法を開発する。加えて、複数台のプロジェクタを用いて、(C)巨大な合成開口を生成することで遮蔽物の多いシーンにおける3次元復元を実現するシステム、および、(D)空間中の任意の平面に任意のパターンを描画するシステムを開発する。初年度はこのうち、(A)のパターン設計および、(B)のキャリブレーション、(D)の基礎実験を行った。具体的には、1)3次元復元に適した符号化アパーチャと投影パターンの設計を行いラインパターンが有効であることを確認した。また、2)計測・学習ベースによるライトフィールド・プロジェクタのキャリブレーション手法を開発し実際に3次元復元に成功した。さらに、3)任意の平面に描画するための投影パターンのエピポーラ線に限定した解法の開発を行い、複数平面に異なるパターンを投影する実システムを構築した。これらの成果は、査読付き会議・論文誌への投稿・採択され、研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、大きく3つのテーマで研究開発を行った。 1)3次元復元に適した符号化アパーチャと投影パターンの設計:各パターンは2次元であり、それをアパーチャと投影パターンそれぞれで設計する必要があることから、全てのパターンから探索することは困難なため、高周波どうしの畳み込みは高周波になる、という性質を利用して、探索範囲を高周波パターンのみに制限することで効率よく設計を行った。結果として、ラインパターンどうしの組み合わせが最適であることが判明し、深い被写界深度での3次元復元に成功した。成果をシンポジウムで発表した。 2)ライトフィールド・プロジェクタのキャリブレーション手法の開発:平面板をプロジェクタに正対するように設置し、これにパターンを投影することによるプロジェクタとカメラのキャリブレーション手法を開発した。この時、平面板を0.5mm刻みで移動しながら全てのデータを計測し、3次元復元に利用する。ただし、データが膨大となることからこれを圧縮し、同時に復元時間も短縮するアルゴリズムも開発した。成果は、シンポジウムで発表した他、現在論文投稿中である。 3)任意の平面に描画するための投影パターンのエピポーラ線に限定した解法の開発:2ないし3平面に任意のパターンを描画するアルゴリズムを開発した。その際、画素値を決めるのに関与するのはエピポーラ線ごとであることを利用し、計算に必要な方程式を分割することで効率的な計算手法を開発した。成果は、国際会議に採択され発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、所属研究機関を異動したために、当初研究計画では予想していなかった研究環境の再構築が必要となった。そのために研究計画を見直しつつ、遅延なく目標に達成できるよう早急に研究に必要な実験環境や人員の確保に努める。具体的な目標は以下の通りである。 ○実機によるパターンの設計・テスト:実システムのキャリブレーション手法を用いて、実機による性能評価を行う。さらに、実システムでは、幾何的なレンズ歪や色収差などの、シミュレーションには無い特性が多くあるため、実システムにおいて性能低下の少ないアルゴリズムを改良・開発する。 ○複数プロジェクタを用いたライトフィールド・プロジェクタの開発:設計した投影パターンを用いて、これを複数プロジェクタで投影することで、合成アパーチャによる仮想の巨大プロジェクタや、広範囲を投影可能な仮想の全方位プロジェクタを作成する。また、これを3次元復元に利用するためのアルゴリズムも設計する。合成アパーチャを用いれば、対象物との間に障害物があってもパターンの投影や形状計測を実現できる。 ○人間の視覚特性を利用した最適パターン設計:複数パターンを同じ場所に投影する場合、光は足し合わされるのみで、減じることができないため、ダイナミックレンジが低下してしまい、人にとっては見にくいパターンとなる。そこで、人間の視覚特性を利用して、人の目に認知されやすいパターンや、逆に変化に気が付きにくいパターンなどを組み合わせることで、投影されたパターンが、人の目に見やすいパターンを設計する。そのためのアルゴリズムも開発する。
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