研究課題/領域番号 |
16H02875
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
内野 英治 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30168710)
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研究分担者 |
末竹 規哲 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (80334051)
廣 高史 日本大学, 医学部, 准教授 (10294638)
江口 正徳 一般財団法人ファジィシステム研究所, 研究部, 主任研究員 (60613594)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心筋梗塞 / 動脈硬化診断 / 血管内超音波法 / プラーク組織性状判別 / ソフトコンピューティング / 学習 |
研究実績の概要 |
心筋梗塞はプラークと呼ばれる冠動脈内の蓄積物が破綻することにより引き起こされる.プラークの破綻を予測するためには,プラークの組織性状(組織成分)を正確に同定する必要がある.申請者らは,血管内超音波信号の知的解析により,プラークの組織性状を判別,その構造を表示する動脈硬化診断支援システム(プロトタイプ・システム)を開発し,従来手法に対する優位性を確立した.本研究では,本プロトタイプ・システムの実用化を目指し,本システムの有効性を実データで実証する.平成29年度では,以下のことを行った. 1. サポート・ベクトル・マシン(Support Vector Machine: SVM)をツリー状に配置した新たな構造を持つ識別器を提案し,冠動脈プラークの組織性状判別を行った.根ノードに配置されたSVMは,入力されたデータの判別困難性を判定し,判別が容易なデータと困難なデータを即座に識別,判別が容易なデータはそれ用に学習されたSVMへ,判別が困難なデータはそれ用に学習されたSVMへそれぞれ引き渡される.これにより,プラークの組織性状判別精度が従来よりも向上した. 2. Restricted Boltzmann Machine(RBM)を用いた新たな判別法を提案した.具体的には,プラーク組織から反射された超音波信号(Radiofrequency Signal: RF信号)を2値画像パターンに変換した新たな特徴量抽出法の提案,プラーク組織データの不均衡さ(組織ごとのデータ数のばらつき)を考慮した新たな判別法の提案,誤判別率を判別アルゴリズムに取り入れ,再学習を行う新たな判別法の提案などを行い,従来手法よりも判別精度を向上させた. 3. 上記で新たに開発した手法,および前年度までの既開発手法の整理を行い,動脈硬化診断支援システムの総合評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工知能を用いた冠動脈プラークの新たな組織性状判別法を開発し,既開発手法に勝る精度が得られた.また,実用化に向けた動脈硬化診断支援システムの最終検討およびベンチャー企業への技術移転の検討も開始した.
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今後の研究の推進方策 |
1. 臨床データの収集: 検体を用いた剖検(解剖)データはなかなか集まらないため,平成30年度においても引き続き,研究分担者である日本大学医学部の廣の協力を得てデータの収集に努める. 2. 各種組織性状判別アルゴリズムの最終精緻化および統合化: 平成29年度では,今注目を浴びている人工知能(ディープ・ラーニング(深層学習))を,本研究課題に取り込み,さらに精度の高い組織性状判別法を開発した.平成30年度では,さらにそのアルゴリズムの精緻化を行い,また,今までに開発済の各種手法(HkNN法,スパース・コーディング法,カオス・フラクタル法,他)との統合化を図り,最終的な統合化組織性状判別手法の確立を目指す. 3. 実用化に向けた動脈硬化診断支援システムの最終検討: 研究代表者の研究室には,地域医療センターにて,実際に心臓カテーテル治療に携わっている技師がおり,本研究に従事している.診断支援システムの一般公開をするにあたり,当該技師にシステムの使用感やその他の要望などのヒアリングを行い,最終のシステムへと近づけて行く. 4. ベンチャー企業への技術移転の検討: 実用化後には,プログラムのメンテナンスやアフターケア等が発生する.プロジェクト終了後,当該研究室内で恒常的にこれを行うことはできない.平成30年度では,実用化後を見越し,プログラムのメンテナンスおよびアフターケアを行うベンチャー企業への技術移転等の検討を行う.
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