多目的最適化問題のパレートフロントを近似する非劣解集合を求めるために,様々な進化型多目的最適化アルゴリズムが提案されている.一般に,交叉確率や突然変異確率などのパラメータ設定は,個々のアルゴリズムで異なるため,性能比較を行う場合では,個々のアルゴリズムにおいて最適なパラメータの設定が注意深く行われる.すなわち,個々のアルゴリズムに対する最適なパラメータ設定を用いて,アルゴリズム間の比較が行われる.しかし,非劣解集合の評価指標として用いられるHVとIGDは,個体群サイズを増加させると単調に評価結果が改善する傾向がある.そのため,個体群サイズに関しては,すべてのアルゴリズムで同一の設定で比較が行われ,個体群サイズの設定により,アルゴリズムの評価結果が異なるという問題が発生している.この問題点を解決する方法として,本研究では,以下のような3通りの方法を提案した. (1)個体群サイズを100程度から5000程度まで,様々な値に設定し,アルゴリズムの評価を行う.すなわち,単一の設定値に対する評価ではなく,多数の設定値に対する評価を行う. (2)例えば,100個の非劣解を含む解集合を求める場合,個体群サイズを100に設定するだけではなく,個体群サイズを100以上の様々な値に設定して得られた最終個体群から選択された100個の非劣解の評価を行う. (3)上記(2)において,最終個体群だけではなく,探索中に調べられた全ての個体から選択された100個の非劣解の評価を行う. さらに,このような3種類の評価方法を用いた数値実験を行うことで,アルゴリズム間の評価結果が個体群サイズの設定に大きく依存すること,最終世代の個体群と選択後の解集合の評価結果には大きな相関があること,探索中に調べられた全ての個体から解選択を行うことで,アルゴリズムの性能が大きく改善されることを示した.
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