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2016 年度 実績報告書

パワーアシスト装置の操作における違和感の定量化とそれに基づく違和感低減手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16H02881
研究機関三重大学

研究代表者

池浦 良淳  三重大学, 工学研究科, 教授 (20232168)

研究分担者 早川 聡一郎  三重大学, 工学研究科, 准教授 (50288552)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードユーザーインターフェース / マンマシンインターフェース / パワーアシスト / 違和感
研究実績の概要

パワーアシスト装置は現状の高齢社会に必需となるが,操作者が運搬物体を「重い」と視覚的に感じているにもかかわらず,アシスト装置により必要以上に「軽く」操作できてしまうと,結果的に予想外の急激な危険操作をする可能性が高い.これにより,操作に違和感や恐怖感を抱き,事故につながるなど,緊急に解決しなければならない問題である.この問題は操作者が事前に感じる視覚的重量感と操作中の体性感覚的重量感が大きく異なることが原因と考えられる.そこで,本研究の目的は,人間の手の皮下組織を変形制御することによりパワーアシスト操作時の体制感覚的重量感を変化させ,先の問題を解決し,実用的で安全安心なパワーアシスト装置を開発することである.
平成28年度では,指の皮下組織を変形制御することにより,人間の体性感覚的重量知覚特性を制御可能か検証するため,シャフトモータを利用した鉛直1自由度パワーアシストシステムを試作した.シャフトモータは,シャフト部に永久磁石を配置し,それを取り囲むコイルに電流を流すことで駆動するものであり,高性能な制御が期待できると考えていた.しかしながら,シャフト部に配置されている磁石が非常に強力で,人体にも影響があることが分かり,それを回避する構造としたため,期待したほどの高応答では無く,満足のいく装置を作成することができなかった.従って,限定的ではあるが平成28年度に作成した装置を利用して,体性感覚的重量知覚特性の制御を試みた.その結果,持ち上げ前に指の皮下組織を変形制御する手法については,体性感覚的重量知覚特性を制御することは困難であることが分かった.ただし,持ち上げ後の慣性特性を変更することにより,重量知覚特性の制御が可能であるという新たな知見を得ることができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成28年度では,シャフトモータを使用して高性能なパワーアシストシステムを構築し,体性感覚的重量知覚特性の制御を試みる予定であった.シャフトモータは,シャフト部に永久磁石を配置し,それを取り囲むコイルに電流を流すことで駆動するものであり,ダイレクトに力を制御できるため,高性能なパワーアシストシステムの構築が可能である.しかしながら,大きな制御力が必要なパワーアシストシステムでは,シャフト部に配置される永久磁石は非常に強力なものとなっている.そして,メーカーから購入したシャフトモータでは,シャフト部に配置された永久磁石による磁界は,特に遮蔽されること無く外部に漏れている状況となっていた.その磁界は,人体への影響が非常に大きく,その影響を考慮したシステムの設計及び製作は予想を遙かに超えた時間と労力を費やすこととなってしまった.今後,遮蔽技術を開発すれば,シャフトモータを利用することも可能であるが,現実的では無いと判断している.さらに,予想した高い応答性能も得ることはできなかった.従って,予定していたシャフトモータの利用は中止し,今後は,高応答のダイレクトドライブ型回転モータとタイミングベルト及びプーリーを利用した機構により,パワーアシスト装置を構築していくこととする.そのため,新たに構築した装置を利用して,平成28年度の研究内容を再度実施するともに,当初予定してた平成29年度の研究内容を実施するため,当初の予定よりやや遅れると考えている.

今後の研究の推進方策

平成29年度に予定の高出力パワーアシストシステム試作については,ダイレクトドライブモータとタイミングベルトおよびプーリーを利用した機構を使用する.当該装置に力ベースのインピーダンス制御を適用し,物体の実慣性,実重力に対して,制御により,慣性,重力を任意に変更できるようにする.また,皮下組織変形を直接操作できる機構部を試作し,先のパワーアシストシステムに組み込む.
製作した高出力パワーアシストシステムにより,人間の重量知覚特性が変化するか調べる.重量知覚特性の検証方法は平成28年度と同様に以下を考えている.まず,パワーアシストの物体と同じ形状,大きさの物体を用意する.パワーアシストされた物体とこの物体を区別するため,前者をアシスト物体,後者を非拘束物体と呼ぶことにする.平成29年度は実用的なパワーアシストシステムを開発するため,アシスト物体の重量は10kgとする.
主な実験手順は次のようである.(1)アシスト物体の運動制御部インピーダンスパラメータの慣性,重力を1kgの質量の同特性と同じにする.また,非拘束物体は1kgの質量と同じにする.(2)皮下組織変形特性を変形制御を加えない状態とする.(3)アシスト物体と非拘束物体を持ち上げて,感じる重量を比較する.(4)それぞれの感じる重量が異なる場合,アシスト物体の慣性,重力パラメータを変化させる.(5)アシスト物体と非拘束物体の重量感が同じなるまで(3)と(4)を繰り返し,同じになった時の重量を,アシスト物体の体性感覚的重量とする.(6)皮下組織変形特性を変化させて,(3)~(5)を実施する.
以上より得られた,アシスト物体の体性感覚的重量が皮下組織変形特性によって変化するかを調べる.また,平成28年度で得られた結果と比較し,本実験の確からしさを比較検討する.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Weight-Prediction-Based Predictive Optimal Position and Force Controls of a Power Assist Robotic System for Object Manipulation2016

    • 著者名/発表者名
      S. M. Mizanoor Rahman and Ryojun Ikeura
    • 雑誌名

      IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS

      巻: 63 ページ: 5964-5975

    • DOI

      10.1109/TIE.2016.2561879

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Cognition-Based Control and Optimization Algorithms for Optimizing Human-Robot Interactions in Power-Assisted Object Manipulation2016

    • 著者名/発表者名
      S. M. Mizanoor Rahman and Ryojun Ikeura
    • 雑誌名

      JOURNAL OF INFORMATION SCIENCE AND ENGINEERING

      巻: 32 ページ: 1325-1344

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2018-01-16  

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