パワーアシスト装置は現状の高齢社会に必需となるが,操作者が運搬物体を「重い」と視覚的に感じているにもかかわらず,アシスト装置により必要以上に「軽く」操作できてしまうと,結果的に予想外の急激な危険操作をする可能性が高い.これにより,操作に違和感や恐怖感を抱き,事故につながるなど,緊急に解決しなければならない問題である.この問題は操作者が事前に感じる視覚的重量感と操作中の体性感覚的重量感が大きく異なることが原因と考えられる.そこで,本研究の目的は,皮下組織を変形させることにより,パワーアシスト操作時の体性感覚的重量感を変化させ,先の問題を解決し,実用的で安全安心なパワーアシスト装置を開発することである. 体性感覚的重量感を制御するには,人間の重量知覚特性を把握し,それを基に制御手法を考案しなければならない.そこで平成30年度では,物体を持ち上げる前に人間の重量感を予測する手法を開発した.実験装置として,平成29年度と同様,応答性能の高いボイスコイルモータを用いた鉛直1自由度パワーアシストシステムを用いて,様々な質量の鉛直一自由度運動を実現できるようにし,人間の持ち上げ力及び物体の位置を測定した.その結果,物体を持ち上げる前の持ち上げ力のピーク値及びその時間により,人間が予想する重量感を得ることが分かった.そこで,平成31年度では,得られた予測手法による重量知覚制御手法を開発し,その有効性を検証した.また,平成30年度の手法では,予測に複雑なフィルタ処理が必要となっており,重量感予測が持ち上げ前に予測できない場合があった.そこで,物体に力をかけ始めた力の変化により,ロジスティク回帰モデルにより予想重量感を予測する手法を新たに開発し,その有効性を検証した.
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