研究課題/領域番号 |
16H02884
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今井 倫太 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (60348828)
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研究分担者 |
小野 哲雄 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (40343389)
中臺 一博 東京工業大学, 工学院, 特任教授 (70436715)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 知能ロボティクス / 知能機械 / 認知科学 |
研究実績の概要 |
本年度は,コミュニケーションにおける「間」とコミュニケーションリンクの維持に関する研究として,多人数テレプレゼンス環境の研究,コミューションの「間」と分断状況の研究,コミュニケーションリンクを維持するための空間的カメレオン効果の研究を行なった. 多人数テレプレゼンス環境の研究では,一台のテレプレゼンスロボットを囲んで複数の人が会議をする場面を想定し研究を行なった.複数人とロボットの間で生じる「間」,特にロボットが会議に参加していることが忘れられてしまうことによって生じる「間」をいかにして扱うか研究を行なった.ケーススタディを行なった結果,ロボットの存在を忘れて人だけで会話が盛り上がっている状況は,人の顔の向きの時間的パターンを見る事で判定できることが明らかになった.そこで,ロボットを取り囲んでいる人の身体的向きを認識することで,遠隔操作者が会話の場へ参加し続けることを可能にするシステムを構築した. コミューションの「間」と分断状況の研究では,人がロボットとのコミュニケーションに飽きたことによって発生してしまう「間」(分断状況)の研究を行なった.ケーススタディの結果,人はロボットとのコミュニケーションに飽きてくると,ロボット以外の方向に向き始めることが明らかになった.そこで,人の顔の向きを認識することで,分断状況をロボットが判断し,コミュニケーションを終了する仕組みを構築した. コミュニケーションリンクを維持するための空間的カメレオン効果の研究では,人とロボット間の同期行動の研究を行なった.従来のカメレオン効果の研究では,ロボットの模倣動作を人にバレないようにするために時間的遅延を入れる検討が行われてきた.本研究では,動作の大きさを,人に対して適応的に調整することで,遅延を入れることに無しに,空間的な要因で人にバレないカメレオン効果を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人とロボットのコミュニケーションにおける「間」が,言葉のやりとりの時間的な「間」に限らず,人の身体的態度から把握できることが明らかになってきた.さらに,人の身体的体動を元にして「間」の把握,コミュニケーションリンクの維持,コミュニケーション自体の終了といったことも可能であることが明らかになった.特に,実機を用いたフィールドでのシステムの有効性の検証も行うことができており,単純なシミュレーション研究では明らかにすることのできない,現場での有効性も検証できている.さらに,人とロボットの間のコミュニケーションが円滑に行われているかどうか自体が,「間」を認識することで分かることが明らかになってきており,コミュニケーションの「間」の認識や生成だけの提案にとどまらない研究が展開できている.以上の通り,コミュニケーションの「間」を扱う手法が出揃いつつあり,本研究は概ね順調に進展している状況である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で,コミュニケーションの「間」の発生において人の顔の向きと,コミュニケーションチャンネルの成立との間に関係があることが明らかになった.特に,人の顔の向きからコミュニケーションチャンネルの状態を判定する機構を構築したところ7割の精度で特定できることが分かった.以上の成果を受けて今後はコミュニケーションの「間」における人の他のモダリティや,身体動作との関係を調査し,判定機構の精度を高める.さらに,コミュニケーションチャンネルの成立に寄与する「間」を明らかにする.また,人の動きと協調的にロボットを動作させる機構を用いた「間」の意味づけの研究も行う.人の動きに合わせて動的にコミュニケーションのリズムを作り出す機構に対して,わざとリズムの遅延や動作の停止を導入することで「間」を発生させ,ロボットの動作に対する人の予測のズレに起因する「間」の意味づけのモデルを構築する.具体的には以下の研究に取り組む. ・ロボットとのコミュニケーションに人が飽きてきた状況を作り出し,そこでの人の仕草,姿勢,発話を計測する.また,ロボットとのコミュニケーションの状態を人にラベル付けしてもらい,コミュニケーションチャンネルのクオリティと,人の動作との関係の判定機構を機械学習によって構築する.機械学習の判定結果を元に,コミュニケーションの「間」の発生とコミュニケーションチャンネルの関係を明らかにする. ・人の動作とロボットの動作を相互に影響させながらロボットの動作を作り出すために,動力学モデルを導入する.人が違和感なくコミュニケーションできるリズムを生成できるように動力学モデルのパラメタを調整した上で,わざとリズムを崩す手法を導入する.リズムが崩れた際に人が感じる意味づけを調査することで,動的な「間」の生成モデルとその意味づけモデルを構築する.
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