研究課題/領域番号 |
16H02887
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉澤 誠 東北大学, サイバーサイエンスセンター, 教授 (60166931)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 3D酔い / 映像酔い / 臨場感 / 立体視 / 生体影響 / 感覚不一致説 / 能動視 / 重心動揺 |
研究実績の概要 |
映画・テレビジョン・テレビゲームの3D 化と高精細化(4K・8K 化)が急速に進んでいる.人工的立体視は,遠近感・臨場感・迫真性を与えることができる反面,眼精疲労や「3D 酔い」などの生体に及ぼす望ましくないリスクが伴う.広視野化と高精細化は臨場感・迫真性を増強させる可能性があるが,その分リスクも増える可能性がある. そこで本研究では,リスクを最小にしながら臨場感・迫真性を最大限に引き出すための方法を得るために,次を目的としている.1) 3D 映像のリスクの原因に関する仮説を検証し,発症条件を明らかにする.2) 映像リスク評価システムを高機能化する.3) 3D 表示における広視野・高精細化による臨場感・迫真性の客観的評価と増強方法を開発する. 映像酔いの原因としては,視覚と前庭感覚の矛盾が映像酔いを引き起こすという感覚不一致説が唱えられている.そこで本年度では,このような感覚不一致状態が緩和できるような,映像の動きに合わせて能動的に頭部を動かす能動的視聴と,頭部を常に固定した状態で同じ映像を視聴する受動的視聴とを,映像酔いと臨場感について比較した.SSQに基づいた主観的評価の結果,受動的視聴に比較し,能動的視聴の方が映像酔いが少なく臨場感が向上した.また,重心動揺量を測定した結果でも能動的視聴時のふらつきが少なかった.これらから映像酔いの低減と臨場感の向上にはやはり能動的視聴が有効であることが明らかとなった. すなわち,能動的視聴が映像酔いを軽減し,かつ臨場感を向上させるという仮説の検証を行った結果,能動的視聴が受動的視聴に比べ,映像酔いを有意に軽減させ,臨場感・迫真性を有意に向上させることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
映像酔いの原因としては,複数の入力チャンネルからの感覚情報間の不一致が原因であるという感覚不一致説が有力である.映像酔いの場合,前庭感覚情報からは静止している世界であると判断される一方で,視覚情報からは運動している世界であると判断され,感覚情報間に矛盾が生じる.本研究では,こうした映像酔いを防ぐために感覚矛盾を緩和するような「能動的視聴」を提案し,自身の動きに合わせて画面を追従させるモーショントラッキングを行った.このようにすると視覚情報と前庭感覚を一致させることができるため,感覚不一致状態を少なくすることができ,映像酔いを軽減すると期待され,このような実験方法は他に類を見ないため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本年度明らかになった,感覚矛盾を緩和するような「能動的視聴」が映像酔いを防ぐために有効であるという実験事実をさらに検証するため,HMDを搭載した頭部を能動的に動かす場合と,受動的に動かされる場合とを比較できるような実験系を,頭部をモータ駆動のケーブル牽引する装置を導入することによって構築し,所期の目的達成を目指す.
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