研究課題/領域番号 |
16H02889
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古橋 武 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60209187)
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研究分担者 |
吉川 大弘 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20303753)
ジメネス フェリックス 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60781507)
中村 剛士 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90303693)
加納 政芳 中京大学, 工学部, 教授 (90387621)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソフトコンピューティング / 感性ロボティクス / ヒューマンロボットインタクション |
研究実績の概要 |
本研究では,ロボットの表情と身体動作を組み合わせた共感表出法を開発し,人とロボットによる協調学習を持続させるロボットの行動モデルを開発する.そして,学習者に飽きられることなく,ともに学び合える教育支援ロボットを開発する.H29年度は,表情と身体動作を組み合わせた共感表出法,ユーザに共感する発話の生成法,発達障害児に対する協調学習を促す行動モデルの開発に取り組んだ. H28年度に開発した身体動作による共感表出法と,従来の表情による共感表出法を組み合わせ,相乗/相殺効果を調査し,新たな共感表出法を構築した.本共感表出法を搭載したロボットは,従来の表情による共感表出法のみを搭載したロボットと比べて,学習者のロボットに対する印象を向上させられる結果を得た. 学習者にロボットが共感していることをより実感させるには,ロボットの発話内容が重要である.そこで,適切な発話内容の生成法の基礎検討として,twitterから収集したデータを基に,学習者の興味に応じた発話を生成する手法を検討した.被験者実験を通して,趣味に関する適切な発話内容が生成できることを示した. 発達障害児は,自尊感情が低い傾向にあるため,学習に対するモチベーションや集中力が低いという問題がある.そこで,学習者にヒントを提供する学習支援能力の基礎検討として,Learning by Teachingをロボットに搭載した.この行動モデルを搭載したロボットと共に学習した発達障害児は,単独で学習する場合と比べて,学習に対する集中力が向上する結果を得た. 表情と身体動作による共感表出法で国際会議2件,発話生成法で国際会議1件,Learning by Teachingによる学習支援で査読論文1件,国際会議1件の成果を上げた.また,H28年度の協調学習を促すロボットの行動モデルで査読論文1件,受賞1件の成果を上げた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表情と身体動作による共感表出法の開発に関しては,従来の表情のみによる共感表出法に比べて,より感情を的確に表出できる表情と身体動作の組み合わせを確認できた.感情円環モデルの拡充については端緒につくことができた. 以上の過程において,学習者にロボットが共感していることをより実感させるには,ロボットの表情と身体動作だけでなく,発話を伴うことの重要性を認識し,当初計画には無かったが,発話内容生成法の基礎検討を開始した.twitterから収集したデータを基に,試みとして趣味に関する発話を生成する手法の開発を行い,被験者実験を通して基礎的成果を得た.学習者の学習状況に応じて,ロボットの発話による共感表出への応用の足がかりを得た. 行動モデルの開発に関しては,学習者にヒントを提供する学習支援能力の基礎検討として,Learning by Teachingと呼ばれる学習支援能力をロボットが問題を解く動作に搭載し,ロボットと共に学習した発達障害児の集中力を向上させることができた. 未着手の課題は,学習者の学習状況に応じてタイミング良く感情を表出する感情ベクトル更新法の開発,行動モデルおいて,ロボットが問題を解く動作に対して,学習内容を徐々に忘れる忘却能力の効果の検証,学習者を観察する動作に対して,ヒントを提供する学習支援能力,経過時間/正誤の状況に応じた共感表出法の効果の検証などである.
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今後の研究の推進方策 |
H30年度では,まず,H28年度に開発したタブレット型教育支援ロボットTabot に,H29年度に開発した表情と身体動作による共感表出法を搭載して,大学生を被験者とする実験を実施し,学習者のロボットに対する飽きの軽減効果を検証する.検証実験は,名古屋大学,名古屋工業大学,中京大学の学生を対象に進める. 次に,H28年度に開発した協調学習を促す行動モデル(ロボットの正解率を学習状況に応じて変動させる能力,モデリングと呼ばれる学習支援能力を持つモデル)とH29年度に開発した表情と身体動作による共感表出法を統合して,Tabotに搭載し,小学生,中学生を対象に被験者実験を実施する.この実験は,家庭で学習する環境を想定する.実験結果を基に,行動モデル,共感表出法,Tabotを改良する. また,上記の実験と並行して,より複雑かつ自然な感情表現を可能とするように感情円環モデルの拡充を行い,学習者の学習状況に応じてタイミング良く感情を表出する感情ベクトル更新法を開発する.さらに,行動モデルおいて,ロボットが問題を解く動作に対して,学習内容を徐々に忘れる忘却能力の効果の検証,学習者を観察する動作に対して,ヒントを提供する学習支援能力,経過時間/正誤の状況に応じた共感表出法の効果の検証を進める. 最終段階では,問題を解く動作に関わる3つの能力(学習能力,学習支援能力,忘却能力)と観察する動作に関わる2つの能力(学習支援能力,共感表出能力)からなる行動モデルと,感情円環モデル+感情ベクトル更新法に基づく身体動作と表情変化による共感表出法をTabotに統合して,小学生,中学生を対象に被験者実験を実施し,本教育支援ロボットによる学習者の飽きの軽減効果を検証する.
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