研究課題/領域番号 |
16H02893
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三輪 洋靖 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (30367073)
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研究分担者 |
梅村 浩之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (10356587)
窪田 聡 国際医療福祉大学, 小田原保健医療学部, 准教授 (90433614)
平田 文 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (30582077)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体計測 / 感性計測評価 / 嚥下 / 食事 / モデル化 |
研究実績の概要 |
私たちの生活において、飲食品の摂取行動である「食」はエネルギー摂取のために欠かすことのできない一方、質の高い食事は楽しみであり、生活の質を高めることが経験的に知られている。本研究では、「食事の楽しさ」は感覚的要因と環境的要因から構成されると考え、各要因の構造を説明できるモデルの構築とモデル間の関係性の解明を行うことで、「食事の楽しさ」の構造を明らかにする。さらに、「食事の楽しさ」モデルを応用し、「食事の楽しさ」評価システムを研究期間内に開発することを研究目的とした。 初年度である平成28年度は、感覚的要因、環境的要因の計測とモデル化および「食事の楽しさ」評価システムの開発に重点を置いて研究を進め、以下の5点の成果を得た。 (1)若年健常者に対して、特性が異なる様々な飲食品を摂食・嚥下したときの嚥下音、筋活動、運動を同期して計測した。そして、試料摂取時における各信号の特徴量に加え、それらの相互関係に関する基礎的知見を得た。(2)若年健常者に対して、摂食時の筋活動と頸部圧力を計測し、口腔内に食べ物を運ぶタイミンングに関する視覚情報と上肢運動が嚥下反射に与える影響を検討した。その結果、視覚情報、上肢運動は反射相である咽頭期には影響しないを明らかにした。(3)若年健常者を対象とし、飲水時の水の温度、飲水量の違いが血圧に及ぼす影響を検討した。そして、冷水刺激による昇圧効果の増加は、降圧作用を高めるため、圧受容器反射感受性を高めていたことが示唆された。(4)食事とそれを取り巻く諸要因に対して「人は何を楽しみにしているか」についての大規模アンケート調査を行い、食品に関する因子、他人と関係性に関する因子、満腹感に関する因子、雰囲気に関する因子が示唆された。(5)試料摂取時の喉頭部の運動解析を支援するプロトタイプソフトウェアを開発し、その有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画では、(1)嚥下音・筋活動による感覚的要因のモデル化、(2)味覚による感覚的要因のモデル化、(3)自律神経応答による感覚的要因のモデル化、(4)食事中の他者との関係性による環境的要因の計測とモデル化、(5)姿勢による感覚的要因の評価、(6)「食事の楽しさ」評価システムの仕様設計の6つの課題について進める計画であった。この計画に対し、研究実績で報告した通り、実験やシステム開発が進んでおり、各項目ともに計画とほぼ同程度の進捗と成果を得ることできた。以上より、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策について簡潔に入力してください。 2年目にあたる平成29年度は、感覚的要因のモデル化のため、試料摂取時の嚥下音や筋活動、生理反応に関する実験を、環境的要因のモデル化のため、食を楽しむための要因の探索を平成28年度に引き続いて実施する。さらに、分析対象を若年者から高齢者に拡張することで、モデルの拡張を進めていく。さらに、「食事の楽しさ」評価システムを開発するため、利用が想定されるユーザーとの連携関係を構築し、最終年度の実験に向けた準備を進める。
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