本年度は「マルチミックス蛍光抗体法を用いた切除断端部残存乳がん細胞補助検出技術の研究」と「術中迅速標本と永久診断用標本との比較による乳がん残存細胞検出アルゴリズムの検証」を実施した。術中遠隔病理診断における切除断端の確認においては肉眼的な所見に依存した悪性所見の確認が行われているが、微量の残存癌細胞の有無を高感度かつ定量的解析を行うため、乳がん細胞において発現が認められるバイオマーカーについて検討を行い、本診断技術に応用可能なマルチカクテル抗体組成を確立した。カクテル抗体組成はがん抑制遺伝子であるp53や細胞周期関連タンパクであるp21、p27などを50症例の乳がん症例において検討し、その結果切除断端と正常組織を判別するのに適したカクテル抗体として、細胞周期関連バイオマーカー蛋白を主とする組成を3種開発した。本抗体の有用性について残存乳がん細胞検出技術の診断精度を検証するため、過去の乳がん手術症例での術中迅速診断標本と術後永久診断標本を用いて検討を行った結果、術中迅速診断標本と永久診断標本との間での診断誤差は認められなかった。 本技術について臨床実証評価を行うため、新たに乳がん術中迅速診断用標本スキャンニングシステムを開発した。本システムは標本スキャンニングによる画像取得と、化学発光による高感度検知を両立させた標本スキャンニングシステムである。前述のカクテル抗体に対し、化学発光標識を行うことによってフォトン(光子)量をカウントし、画像位置情報とフォトン検出量をリンクさせることを可能とした新たな診断システムである。本装置については平成30年度研究開発において最終臨床評価に供する予定である。
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