研究課題/領域番号 |
16H02900
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
本井 幸介 静岡理工科大学, 理工学部, 准教授 (80422640)
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研究分担者 |
山越 憲一 昭和大学, 医学部, 客員教授 (40014310)
坂井 宏旭 独立行政法人労働者健康安全機構総合せき損センター(研究部), 独立行政法人労働者健康安全機構総合せき損センター(研究部), 研究員(移行) (10707037)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 無負担型生体計測 / 生理機能 / ネットワークシステム / 遠隔・在宅医療 / 循環器系罹患療養者 / スマートホーム |
研究実績の概要 |
本研究では、循環器系罹患患者における在宅療養生活を支援するため、申請者らがこれまでに開発したセンサ装着や機器操作の必要のない生体計測技術に基づいて、病院と連携した在宅モニター・遠隔支援システムを開発し、その医学的検証を行う。これに向け、H30年度は以下の研究成果が得られた。
(1) ベッドにおいて全自動で血圧の変動を追跡可能な新たな計測原理と、そのプロトタイプ計測システムを開発し、市販血圧計ならびに容積補償法に基づく連続血圧計との同時計測・比較実験より、良好な性能が確認された。(2) トイレに設置可能な体重・排泄量・心弾動図・血圧計測システムについて、これら情報を融合することにより心拍出量までを推定可能な解析プログラムを開発し、胸部電気的アドミタンス法との良好な一致が確認された。(3) 浴槽に簡便に設置可能なクッション型あるいは浮かべるだけの心電図・呼吸計測システムを実現し、脊髄損傷者の入浴時のストレスや疲労による影響を検知可能であることが確認された。(4) 無負担型生理機能情報在宅モニター・遠隔支援システムの開発に向けて、特にベッドにおける計測システムについて、クラウドサーバーを基盤とした各システムのネットワーク化を実現した。一方、療養者の体調を検知するための新たな指標、脈拍・呼吸変動性を考案し、脊髄損傷患者における療養支援への有効性を実証した。(5) 開発が先行しているベッド及び浴槽システムについては、実際の医療施設に導入・試験運用し、継続的なフィールド試験や、得られるデータの医学的有効性を実証してきており、現在も継続中である。
今後は各システムのさらなる精度向上と、ネットワーク化を進め、プロトタイプ療養支援システムを開発する。さらに、疾病の予兆などを早期に検知できる指標・解析プログラムの開発も行いながら、患者を対象とした有効性評価を継続的に実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」における(1)~(5)項目の成果について、おおむね順調な進展と判断する根拠を、順を追って以下に示す。
(1) 当初局所圧迫機構をシーツに組込む方式をさらに発展させ、ベッドシーツ型センサのみを用いる方法を考案し、これは連続計測という観点からも望ましいものである。さらに計測精度に関するデータも集まりつつあり、論文投稿の準備を進めている。(2) トイレでは、従来から検討を進めていた体重関連指標や血圧に加え、これら情報を融合した心拍出量計測を実現した。一方として、従来型の胸部アドミタンス計との比較データも集まりつつある。トイレにおける計測は、特に申請者らの独自性の高い技術であり、上記同様さらなる論文投稿の準備を進めている。(3) 従来の浴槽システムは、煩雑な電極固定位置やその設置工事の必要性などが、実用化への障壁であった。これに対し、在宅の既設浴槽にクッションを固定するだけのシステムを実現、脊髄損傷者の在宅での計測結果から、その良好な計測精度や体調管理への有効性が示され、これら成果は、全文査読付き国際会議論文1件の発表を行っている。(4) ベッドにおけるネットワークシステムについては、脊髄損傷患者を対象とした数ヶ月の継続的な計測に成功しており、患者の体調変化を追跡可能であることが確認されている。またこれらに関する成果は、国内1件、国外2件の学会において発表を行っている。(5) 医工連携体制を維持・発展させながら、継続的な医学的評価を行うことにより、具体的な成果も出ており、論文・学会等での成果発表も継続的に行ってきている。次年度も2件の査読付き国際会議論文、2件の国内会議での発表が採択済であり、さらなる発展が期待される。
以上の根拠により、本研究の成果発表はこれから実施する部分もあるが、おおむね順調に進展しており、当初の目標を達成しつつあると考える。
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今後の研究の推進方策 |
開発を行ってきたベッド、トイレ、浴槽における心拍、呼吸、血圧、心電図、体重関連指標などを計測可能なシステムについて、実用に供し得るプロトタイプモニターシステムの開発を行う。また、得られたデータから、体調の悪化を検知可能な指標やその解析アルゴリズムを検討し、自動解析ソフトウェアの開発も行う。一方、医療機関内外にシステムを導入し、脊髄損傷患者を対象とした有効性を評価する。具体的には、以下の課題を推進する。
(1) 各計測システムにおけるセンサは、既設の調度にも簡便に設置できるよう、センサ配置や構造を最適化するとともに、Wi-Fiモジュールなどの通信機能を融合し、IoTヘルスケアモニターとして完成させる。(2) 解析ソフトウェアについては、ベッドから得られた脈拍・呼吸信号などの周波数帯域を分析することにより、これらの変動性を数値化する新たな指標を検討し、その有効性を評価する。また、入浴時の心電図や呼吸からは、緊急性の高いイベントや、ストレス状態を判断する。一方トイレにおける体重、心弾道図、血圧、心拍出量からも、その変動性を解析し、各種疾病や体調悪化との相関関係を調査し、有効な解析指標を洗い出す。(3) システムを用いて、循環器系疾患を併発する患者を対象とし、総合せき損センター内、あるいは患者の自宅において、継続的な体調モニタリングを行う。この際には、既設の医療用モニター等との同時計測・比較なども実施し、システムの精度や、様々な治療や看護による指標の変化を追跡し、本システムの医学的有効性を実証する。
なお、研究連携体制については、総合せき損センター(福岡県飯塚市)や昭和大学医学部(東京都)との連携を継続し、臨床応用検討を進めていく。さらに得られた成果は、様々な対象者や分野における臨床応用も発展させていくべく、国内外における技術系・臨床系学会、学術誌等における成果発信を行っていく。
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