研究課題/領域番号 |
16H02904
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲司 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (70396117)
|
研究分担者 |
手塚 太郎 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (40423016)
若林 啓 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (40631908)
歳森 敦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (80222149)
斉藤 和巳 神奈川大学, 理学部, 教授 (80379544)
伏見 卓恭 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 助教 (80755702)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 社会ネットワーク分析 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
ソーシャルメディアにおけるユーザ間のフォロー関係を表すネットワークに対して、ユーザの専門度と親密度を考慮した意見形成モデルを構築し、この意見形成モデルを用いて、各ユーザの期待影響度を効率的に計算するアルゴリズムを提案した。専門度を考慮した提案モデルは,既存の単純モデルと比較してより精緻に高影響度ユーザを同定できることを明らかにした。また、代表的なネットワーク分析指標の媒介中心性概念を時間経過に基づく動的なものに発展させ,ステップ分解型媒介中心性と呼ぶ分析指標を考案した。今年度は、媒介度時間変化曲線に基づきネットワーク上の各ノードを類型化する手法を確立し、道路網の混雑度分布に関する評価実験などにおいてその有効性を確認した。 機械学習基盤の研究では、統計的機械学習に基づく時系列データ解析手法の開発を進めた。特にイベント系列に対して定義された正定値カーネルを多チャネルに拡張する手法を考案し、ラベル付きのイベント系列に対しても適用できるようにした。機械学習の主要な手法となった深層学習について、そのモデル選択と最適化を改善する手法の研究を進めた。 知識抽出基盤の研究では、Twitterデータの継時的な分析によって高速かつ網羅的に話題の時系列変化を抽出する手法を考案した。構造化されていないユーザ生成テキストの統計的な語の並びの特徴から、教師情報なしでスラングや新語などを表す特徴的なフレーズの抽出手法の研究を進めた。更に、ユーザの購買行動におけるアイテム探索ログデータから、購買行動をモデル化する手法を提案した。 社会科学からの研究では、課題解決に影響する要因を、特に報酬の効果を中心に解明することを目的に、実験的アプローチによって報酬の方式、動機、報酬に対する感情、課題に対する感情とパフォーマンスの関係について検討を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
知識抽出基盤および機械学習基盤に関する研究は、順調に推移し多くの成果を創出することができている。特に、両基盤の技術を融合して時系列データの変化を抽出する手法などの解析技術を提案できたことは大きな成果であったと言える。 また、進捗に遅れが見られた社会科学からの研究に関しても、課題解決と報酬の関係に関する研究に進捗があり、利用者実験を終えるところまで進めることができた。結果の分析を進めることで成果として公表できるレベルに進められる見通しを得ている。 以上のことから、研究項目によって進捗に多少の差は出ているが、全体としては概ね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
社会ネットワーク分析では、前年度までに提案した媒介中心性の動的な振る舞いを扱える分析指標に基づいて、コミュニティメディア分析モデル構築に向けて有効な方法論の確立をめざす。また、類似属性を持つユーザ同士がつながるネットワークに対して、親密度を考慮した提案モデルを適用した結果は、既存モデルと同程度の精度であったことから、他のソーシャルメディアデータに対して提案モデルを適用するなどして、隣接ユーザ間の類似性と提案モデルとの関係を明らかにしていく。 機械学習に関する研究では、主にベンチマークデータを利用して評価実験を行ってきたが、今後はより多様なデータに対して提案手法を適用し、その有効性の範囲を検証する。これによって現実世界のデータに対して有益な知見を発見できる手法としていくことをめざす。 知識抽出に関する研究では、フレーズ抽出手法と話題抽出手法をさらに発展させ、コミュニティやユーザの興味推定の高精度化・再粒度化を進め、ソーシャルキャピタルの形成に関わる因子を解明する切り口を得ることをめざす。 社会科学からの研究では、これまでの研究で明らかとなった留学生での知見に基づいて進めてきた研究の成果をとりまとめて、成果となるように取り組みを強化する。
|