研究課題/領域番号 |
16H02910
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
山形 与志樹 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主席研究員 (90239864)
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研究分担者 |
松井 知子 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (10370090)
村上 大輔 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 特別研究員 (20738249)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水害 / agent-based simulation / 避難行動 / 時空間補間 |
研究実績の概要 |
関東・東北豪雨とそれに伴う大規模水害の発生した2015年9月9日からの1週間について、被災地である常総市の関連データを収集・整備した。具体的には、刻一刻と変化する当時の被災状況を空間詳細な単位毎に把握するために、浸水域データとリモートセンシングデータ(国土地理院提供)を、それぞれ複数時点について収集した。また、水害に対する人々の応答を把握するために、ジオタグ付きtwitterデータ(ナイトレイ社提供)を、被災時点を含む一週間について収集した。さらに、被災当時の避難行動、及びその後の人々の行動を把握するために、携帯GPSデータ(Agoop社提供)を収集・整備した。 以上に加え、常総市周辺の平時の人流を把握するために、東京大学空間情報科学研究センターとの共同研究申請を経て、平日一日(パーソントリップ調査日)の標準的な人流データを収集・整備した。さらに、常総市の基本的な社会統計情報として、町丁目毎の年齢階層別人口、世帯タイプ構成、従業者数などのデータも収集・整備した。 一方、水害リスク下での避難行動シミュレーションに向けて、エージェントベースシミュレータ「MATSim」の予備的検討に着手した。それにより、経路選択や渋滞といった交通現象、及び携帯GPSから得られる人の実際の動きを考慮した避難行動シミュレーションを行う方法を検討した。 さらに、時空間補間手法の開発に向けて、異常気象下のような局地的状況をモデル化するのに適した統計モデルとしてしられるg-and-h modelの時空間補間への応用方法を検討した。それにより、同モデルを用いることで高精度な時空間補間が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに完了予定であった「データ収集・加工」については概ね完了した。それにより被災状況や避難変化の時間変化を追うことが可能となった。 また、次年度までに済ませる予定である時空間補間手法の開発に関しても、極値状況下での時空間補間という我々の問題設定に適した統計モデルg-and-h modelを発見でき、またその時空間補間としての有用性も確認することができた。ここでの結果を発展させることで、水害リスクの状況を高精度に時空間補間するための手法の開発が期待できる。 さらに、特に本研究課題の後半で研究を進める予定のエージェントベースモデルについても、MATSimの有用性やMATSimに携帯GPSの情報を同化する方法についても目途をつけることができた。 以上より、本年度に実施予定であった研究計画は概ね遂行されたと判断し「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に収集・整備したデータの解析に着手する。具体的には、いくつかの時点にしか標本が存在しない浸水域データ、衛星画像データ等を入力として、任意時点・地点の水害リスク(及びリスクの三要素:ハザード、暴露、脆弱性)やその不確実性を時空間補間する方法を検討する。そのために幅広い時空間データを考慮した時空間補間を行うことができるようにg-and-h modelを拡張する。 また、以上で補間した水害リスク状況を入力とした避難行動のエージェントベースシミュレーションについても、予備的検討を開始する。そのために、携帯GPS情報や被災状況を入力として人々の動きをモデル化・シミュレートするための方法を、MATSimをベースとして検討する。 以上の結果も踏まえながら、水害リスク情報を提供するためのの効果的なサービス設計手法の検討に着手する。
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