研究課題/領域番号 |
16H02914
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
諏訪 博彦 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (70447580)
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研究分担者 |
栗原 聡 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30397658)
安本 慶一 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (40273396)
荒川 豊 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (30424203)
藤本 まなと 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (80758516)
水本 旭洋 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 特任助教 (80780006)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 災害情報流通システム / 多段階層型集約法 / 災害情報DTN / スマートマルチホップ通信 / 社会情報システム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,インターネット壊滅時でも持続可能な災害情報流通システムを構築することである.災害時にはソーシャルメディアを通じて大量の情報が発生する.しかしながら,その情報をどのように集約・流通(組織化)させるべきか,そのメカニズムは明らかになっていない.我々は,この課題を情報組織化問題として捉え,時々刻々と変化する災害情報を複数の粒度で動的に集約する「多段階層型情報集約法」を構築する.加えて,被害の大きかった地域ではインターネットが遮断され情報流通が妨げられた.我々は,スマートマルチホップ通信と災害情報DTNによる情報流通インフラを構築し,インフラの状況に合わせて情報の集約粒度を変化させる災害情報流通支援システムにより災害情報を組織化し,減災に寄与する社会情報システムの構築を目指している. 本研究は,Step1:災害時の情報流通モデルの構築,Step2:インターネット壊滅時の代替ネットワーク構築,Step3:災害情報流通支援システムの構築,Step4:災害情報流通支援システムの評価にて構成される 平成29年度は,Step1,Step2を継続して実施するとともに,Step3:災害情報流通支援システムの構築に取り掛かった.具体的には,災害発生時の避難誘導システムの構築について検討した.具体的には,災害発生時にどの地域に人が多く集まっているのかを把握するために,混雑度を収集する手法について検討した.また,災害発生時に避難誘導を実施することで,どの程度避難時間を短縮できるか検討するために避難シミュレーションを用いて評価した.その結果,災害発生時だけでなく,避難行動によって発生する動的な混雑殿変化も考慮した避難手法が有効であることを確認している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,予定通りStep3:災害情報流通支援システムの構築について検討している.具体的には,多くの人々が活動している地域を対象とし,被災者全体の避難時間を削減することを目的とする避難所決定システムについて提案している.システムは,被災者の被災時の位置情報と各避難所の収容可能数に基づき,被災者全体の避難時間が短くなるように避難所を決定する. 提案手法の有効性を評価するため,京都の祇園祭を想定したマップに一般的な避難所決定手法である最短経路選択およびランダム選択と比較した.その結果,提案手法を用いた場合,最短経路選択と比較して平均避難時間を35.9%削減できることごを明らかにした.また,提案手法に従う人が全体の20%であっても,平均避難時間を8.1%削減できることを確認した.この結果から,例え一部の人であっても提案手法を用いることで,全体の避難時間を短縮でき,防災・減災に寄与できることが分かった. この成果以外にも,業績で示すように,混雑度推定システムの開発,スマートシティにおける本システムの活用方法の検討,平成28年度の成果発表など,順調に研究課題を遂行しており,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,継続してStep3:災害情報流通支援システムの構築を行う.また,Step4:災害情報流通支援システムの評価について検討を始める. Step4では,構築した災害情報流通支援システムの評価を行うために,マルチエージェントシミュレーションを用いた検証と,模擬的にシステムを利用する実証実験を行う.有効性評価については,情報流通の速度・範囲といった客観的評価と,利用者に対する質問紙調査を用いた主観的評価を実施する. シミュレーションによる検証には,Scenargieを用いる.避難所や大規模施設,および一定規模の集落を想定し,構築したシステムを用いた情報流通を想定したシミュレーションを行う.構築したシミュレーションモデルのパラメータをコントロールすることにより,どのような対策を採ることで情報流通をコントロールできるのか明らかにする. 実証実験は,東京都三鷹市と奈良県生駒市で実施することを想定して検討を行う.三鷹市は,ICT街づくり推進事業を長年展開しており,これまでの実証実験で構築された各種システムを利用可能である.三鷹市との連携については,株式会社まちづくり三鷹を窓口として実施する.また,生駒市では,研究者分担者である荒川が幹事を務めるCODE for IKOMAと連携し実証実験を行うことを検討する.
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